世界的には各国の論文数は増加傾向にあるので、海外との差が広がっている。(3)医育機関の麻酔科専攻医並びに教員の学術活動 医育機関での学位希望者の割合は20-30%程度で、他医学分野(約50%)に比べ、半分程度しかない。国公立大と私大での差はないが、私大は2018年以降明らかに低下している(図7)。女性の学位希望者は20%以下で、男性の半分程度である。米国の研究活動指標の男女差を見ても、どの医学領域でも女性は男性の半分程度であり、日本も同様である[4]。また、医育機関でありながら専攻医が学会発表しない施設が40%近くあり、また論文も出さない施設が30%あった。研究をしなければ演題の題材がないので、演題数低下は必然である。更に、専攻医(若手麻酔科医)が研究をしていない実態が明らかになり、このままでは将来、研究力はさらに低下する。2.研究力再興のための対策 将来的な麻酔科学研究の落ち込みを防ぐためには、まず会員全員で現状に対する危機感を共有し、診療、教育だけでなく研究も重要との認識を持つことが必要である。以下に研究力再興のための好循環をもたらす対策を述べる(図8)。(1)講座の在り方を考える 教室員の収入増や地位向上を図ることは、教室員の士気を一過性には高める。しかし、これら「地位財(所得、社会的地位、物的財)」は、周囲との比較により満足を得るもので満足度の持続性は低い[5]。努力をして財や地位を手に入れるが、飽きて更なる地位財を求め、それらを得ても再び満足が薄れ、いつまでたっても満足できない。1960-2010年の50年間で日本のGDPは7倍に増えたにも関わらず、国民の生活満足度は一切向上しなかったことと同様である[5]。持続性のある満足を得るためには、他人との比較とは無関係な「非地位財(健康、自主性、社学位希望あり全大学病院(n=30)学位希望しないその他私立大学国公立大学図7.医育機関学位希望者数の推移92
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