29207005医療行政シーリング数-121-785241311321623336以下の都道府県における研修を行った専攻医にインセンティブを与えるような基準も作られた。一方、学会はこれまで学術団体として会員の知識や技術の啓発を通して国民医療に寄与することを目的として活動してきたわけであるが、医療法、医師法の改正によって、国の政策を実現させるための職能団体としての責務が課されることになった。2019年に法改正が施行された直後には、各基本領域学会は必要医師数の見直しなどを厚生労働省や日本専門医機構に働きかけたが、一部の見直しを除いて当初の数字に近い数字を基に、各基本領域学会に対して必要養成医師数を達成するための種々の方策が示された。その一例が主に大都市圏に対する専攻医採用数に上限を設けるシーリングである。麻酔科の場合、北海道、東京、神奈川、大阪、京都、福岡などにシーリングが設けられた。シーリングによって、これらのエリアの大学病院における専攻医採用数は前年採用数よりも少なく設定された施設が多くなった。シーリングが設けられている診療科やエリアを避けて研修先を探す研修医も少なくないことから、医師の診療科偏在、地域偏在の是正に一定の効果が見られていることも否定できない。北海道東 京神奈川京 都大 阪岡 山福 岡全都道府県 著者が理事長を拝命した直後に日本専門医機構からシーリング案が示されたわけであるが、再三の要望や協議によっても見直しが行われなかったことを受けて、2019年12月に麻酔科議員連盟である「日本の安全な麻酔・周術期医療を考える会」を設立していただいた。第1回議員連盟では麻酔科医の抑制が国民医療にマイナス影響を及ぼす可能性について議論を交わした。ここには厚生労働省の担当官にもご出席いただいた結果、その翌月には担当官より外科系全手術のDPCデータを用いて必要養成医師数を再計算する旨の電話をいただいた。その結果、表1に示すように2024年の必要医師数は289人増加した。しかし、年間養成医師数については19人の増加に留まった。その理由は2016年から2018年にかけて医師・歯科医師・薬剤師調査の概況における麻酔科医師数が499人増加し、9,661人になっていたことが挙げられる。ちなみに、2020年の麻酔科医師数は10,277人と初めて1万人を超え、2022年は10,350人であった。2020年から2022年にかけて、わずか73人の増加になっているが、その理由として2022年から集年間養成数4607222121774014162435317238512321622表1.主な都道府県の再計算後の必要医師数2024年必要医師数2019年算定2020年算定2019年算定2020年算定2019年算定2020年算定4451,1341,13869321071415742210,20410,4932.麻酔科医不足99
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