日本麻酔科学会 70周年記念誌
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本心臓血管麻酔学会、日本小児麻酔学会、日本区域麻酔学会等のサブスペシャルティ学会と連携し国際貢献を行うなど、学会として直接的また間接的に、世界各地で求められる高度な麻酔の教育に尽力してきた。 国外麻酔科医の日本への招聘は、日本における「外国医師等が行う臨床修練等に係る医師法第十七条等の特例等に関する法律施行規則」に則り、厚生労働省が主導する外国人医師修練制度を用いて国外から医師を招き指導を行う事業を過去に行った。現在はこの流れが広く全国に広がり、日本麻酔科学会認定施設において外国人の麻酔科医師が研鑽を積む場が提供されている。こうした国内外で優秀な麻酔専門医を育てる事業実績は、開発途上国において麻酔に関わる医師とメディカルスタッフの臨床実績向上と、安全管理の改善に役立つものとして、WFSAの一員としての日本の存在が世界から高く評価されることにつながっている。 麻酔科医が担う世界共通の目標は、医療安全である。日本麻酔科学会はこの理念を米国の麻酔患者安全財団 (APSF) と共有し、2017年よりと麻酔患者安全財団ニュースレター (APSFニュースレター)を日本語に翻訳し、配布を行ってきた。周麻酔期の医療安全が国際水準であり続けることを目標とし、日本語を母国語とする人々に対して広く発信を行っている。現在日本語の他にスペイン語、中国語、フランス語、ポルトガル語、アラビア語、ロシア語に翻訳されている (2024年7月)。 日本から始まったAPSFニュースレター翻訳事業が端緒となり、日本麻酔科学会と米国APSFなどの主要な団体が共同で麻酔の安全を討議する国際学会を日本で開催することにつながった。世界に先駆けて、日本麻酔科学会が主催、麻酔患者安全財団 (APSF) 、米国麻酔科学会 (ASA)、日本麻酔科医会連合 (JFA) が共催し、 日本麻酔科学会は2つの英文機関誌、Journal of Anesthesia (JA) とJA Clinical Reports (JACR) を出版している。この両者はPubMedに掲載され、ともにインパクトファクターを有する国際雑誌である。JA誌は1987年に創刊され、2003年にMedline収載、2007年にWEB of Science収録、そして2009年にImpact Factor取得の歴史がある。学会として国際誌を発行し、新たな医学を世界に向け発信することで、麻酔科学の学術を軸とした医学の発展に貢献してきた。こうした学術活動を通し、学会員の国際化を促進し、研究の成果を国際舞台で発表する機会を提供している。 国際化の流れの一環として、日本麻酔科学会では広報委員会が国際交流委員会の協力のもとに、英語版のホームページ拡充を行なってきた。日本独自の麻酔にまつわる情報を英語で解説することで海外への情報発信につながり、日本麻酔科学会の出版する英語版のガイドラインや麻酔を受ける患者への説明文書は英語ホームページからもアクセスできるため、日本の枠を超え麻酔を受ける世界の人に利用されている。 日本麻酔科学会が繰り広げる多彩な国際貢献活動のひとつに、開発途上国の麻酔科医の教育がある。日本麻酔科学会は1960年から世界麻酔学会 (WFSA) の構成学会となり、麻酔医療における国際貢献を繰り広げてきた。その枠組みのなかで、2011年からはオーストラリア麻酔科学会が主催する開発途上地域ミクロネシア諸島の麻酔科医教育支援活動ミクロネシアリフレッシャーコースに講師を派遣し、医療支援教育をおこなう活動を行っている。会員のなかには日4.麻酔科領域における医療安全への国際貢献2.日本麻酔科学会による英文機関誌2誌と、ホームページでの海外に向けての発信3.日本麻酔科学会の国際貢献 麻酔学の開発途上国での教育を目的とした講師の派遣と国外からの麻酔科医師の留学支援106

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