麻酔科医の質の確保と社会的地位と認知度の向上は、公益社団法人としての日本麻酔科学会の役割であり、そのための広報活動が求められる。国民が麻酔関連医療の恩恵を被るためには、麻酔の安全促進、学術研究活動の他に、立法や行政への働きかけが必要となる。 国会議員へのアプローチは、これまで行ってこなかったと言ってよいかと思う。しかし、麻酔科医が直接関係する医師法や医療法、あるいは歯科医師法、保助看法などの関連法案を作るのは国会であり、法が施行されれば大きな影響力を持つことになる。 2018年4月に稲田英一日本麻酔科学会理事長他が、参議院議員2名の力を借りての当時の日本外科学会理事長と理事1名との面会で不本意な対応を受けたことを契機に、麻酔科学会でも議員との接点が必要との反省がなされた。活動を始めるにあたって、党員となって活動するのではないが、学会内には政治に関する活動に対するネガティブなイメージが強く、学術団体である日本麻酔科学会が行うべきではないとの考えの先生方も少なからずおられた。また、これ日本麻酔科医会連合代表理事、元日本麻酔科学会理事長までに経験がなく、麻酔科医に対して誰が、どのような考えなのか、さらに議員間の関係も理解できておらず、どの議員と接触を持つべきかが懸案であった。 森田潔先生が衆議院議員河村建夫氏と懇意であったので相談をしたところ、議員連盟「日本の安全な麻酔・周術期医療を考える会」を2019年12月に立上げることになった。2023年6月までにCOVID-19と集中治療、働き方改革、歯科医による医科麻酔研修、産科麻酔などのテーマで、計6回開催してきた。議員連盟開催を通して直接議員に説明できるようになったことに加え、麻酔科側からの意見に対して厚労省、文科省から必ず直接回答を得られることは大きなメリットとなった。一例として、2019年に必要医師数算定は外科のみの手術件数から算出されたため申し入れを行っていたが、2019年12月の議員連盟開催を経て、2020年1月には外科系全手術件数のデータを用いて算出し直してもらえた。 議員連盟を支援するための麻酔科側の組織が必要であったこと、地域の意見を反映させたり、公益法人での実施が難しい事業を行ったり、日本麻酔科学会の理事任期が短いため論点が途絶・日本麻酔科医会連合第2部 寄 稿行政との関係・はじめに・国会議員108武 田 純 三立法、行政との関係性: これまでとこれから
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