日本麻酔科学会 70周年記念誌
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えないで継続させるための仕組みが望まれた。小板橋理事長の時に理事長相談役として森田潔先生と武田純三が就任して議員連盟の立上げに関与してきた流れより、日本麻酔科学会理事長経験者を中心とした日本麻酔科医会連合の発足の準備を開始した。 2020年2月19日に東京麻酔専門医会拡大総務委員会を開催し、東京麻酔専門医会会員23名の他、森田 潔日本臨床麻酔学会事務局長、北海道・東北、東海・北陸、関西、中国・四国、九州・沖縄地区の代表者5名が参加して、地区ごとの医会と全国組織の必要性の是非について議論がなされた。その後1年近くの準備期間を経て、2021年1月に日本麻酔科医会連合を発足させ、4月に一般社団法人を獲得した。団体会員として各地区医会と麻酔関連学会が、個人会員として日本麻酔科学会理事長経験者で組織された。公益社団法人日本麻酔科学会の意向に沿い支援する組織と位置付け、重要案件の拒否権を公益社団法人が有する仕組みとした。 1954年の日本麻酔学会設立後は、麻酔科を標榜科とするためや、診療報酬に反映させるために厚生省への働きかけを行っていた。しかし、その後の活動に関しての資料は多くは残されてはいない。 麻酔科が特殊標榜科になった経緯からは、必ずしも歓迎されての標榜ではなかったようである。救急救命士の気管挿管に関しても、救急救命士による違法な気管挿管が麻酔科医指導の基で行われており、日本麻酔科学会を含めた4学会合同による報告書が公表されたにも拘らず、「検討会」には当初日本麻酔科学会への委員の推薦依頼はなかった。頻回に厚労省来ている医師がいることが分かったので医政技官に聞いてみると、顔見知りになれば情報も伝えるし、それによって相談や議論のキャッチボールが始まるが、来なければ書面での形式的な通知になりがちであるとのことであった。厚労省と常時コミュニケーションを取る必要性を感じたところである。 1969年2月号の日本医事新報に厚生省は、『麻酔術に熟練した歯科医師に、外科手術を担当させることについて、医業の一部として行うことは認められない。』としている。しかし、舛添厚労大臣の時代の2008年6月に、「安心と希望の医療確保ビジョン」で「産科・小児科・救急科・外科等」の増員のための方策検討を行う一方、麻酔科標榜医制度が麻酔科医増を妨げているとの誤解から麻酔科については標榜資格の規制緩和を謳い、また「社会保障の徹底した効率化を」の答申では、総論議論がなされている中で、唯一各論として「麻酔専門看護師の導入、歯科医による医科麻酔」が取り上げられている。 「歯科医師による医科麻酔研修」は、歯科医師が医行為を行ったため、最高裁で指導医が医師法違反で有罪判決を受けたことに起因する。厚労省により2002年に「歯科医師の医科麻酔研修のガイドライン」が通達され、2009年に改訂が行われた。2021年から再度改訂の検討会が開催されている。 1982年に「手術報酬に関する外保連試案(第1版)」が公表されて以来、外保連は診療報酬交渉の窓口となり、2010年7月には麻酔委員会が設置された。基本麻酔料は1970年以降上昇し、2004年には6,100点まで上昇したが、その後は上げ止まりとなった。一方で周術期管理に対して1996年より麻酔管理料が付けられた。 麻酔困難な患者や長時間麻酔管理等の麻酔全般に係る加算、分離肺換気、座位、低体温、人工心肺等の麻酔手技の加算、パルスオキシメータやカプノメーター使用等の新装置使用への加算等多くの加算が付けられてきた。手術点数の中に麻酔料も含む包括の案を提案されたことがあるが、同じ手術でも患者の状態により麻酔の難易度は変わるとの説明をしてきた。しかし、行政との関係・厚生労働省109

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