日本麻酔科学会 70周年記念誌
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厚生労働部会があり、政府と自民党で意見調整する際の大きな役割を担っている。 国の財政状況が悪く、前期、後期高齢者の顕著な増加、保険料を支払う労働者人口の減少、実質賃金の減少、円安等にともなう物価上昇など、働き盛りの人々の負担を減らすという環境のもと、医学の進歩に伴う医療の高度化に対して十分な財政上の手当を行うのは極めて困難になってきている。 このような構造の下で、医療費全体をどうするのか、さらに医科、歯科、調剤の配分をどうするのか、医科の中で病院、診療所の配分をどうするのかという観点で決められている。さらに配分された財源を個別の診療行為にどのように配分するのかという点も、それぞれの診療科にとっては大きな論点となる。 麻酔科の診療報酬は、一部診療所にも関係あるが、大部分は病院の医療費の中で検討されることになる。麻酔科は外科系学会に属しており、一般社団法人外科系学会社会保険委員会連合(外保連)において学術的根拠に基づき、診療報酬改定に対する試案を作成している。麻酔科学会は外保連の委員をしている麻酔科医を通して学会の主張を試案に反映させていることと思う。財源が厳しい中、幅広い医療行為等の中で麻酔科の求める評価は最低限外保連の意見として発信することが必要である。さらに案件によっては、前述の関係者たとえば厚労省保険担当職員(殊に課長補佐)、財務省厚労担当主計官等の官僚、そして厚生労働政務官、副大臣、大臣、自民党厚労部会幹部、政府厚生労働委員会幹部、現在の与党である公明党の厚労族議員(医師を含む)等の政治家への説明が必要になることもある。また、手前みそになるが、厚労省のカウンターパートでもあり、また政治家に対して一定の影響力を有する日本医師会も重要なステークホルダーである。麻酔科に関する診療報酬については保険担当役と協議して理解を得ておくことも重要だと思う。政治家に関しては、幸い麻酔科連合には議員連盟がある。議連の議員が直接診療報酬に関与していなくとも、その仲介で関係の政治家と意見交換をする機会を持つことも可能となる。今後、麻酔科、ペインクリニック、集中治療等、麻酔科学会に関係する診療報酬は多岐にわたると思われる。それらの評価が適切に行われるためには、前述のごとく多様な関係者の理解、支援が必要であり、多くの学会関係者が手分けして働きかけを強化する必要がある。112

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