日本麻酔科学会 70周年記念誌
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いろ問題も浮かびあがってきました。女性座長を選びたいものの、「誰を選んだらいいのかわからない」という意見もありました。そこで対策室では「候補者リスト」を作成しました。候補者リストは専門医研修プログラムのある医育機関に依頼し、自施設や関連施設の「30~50歳までの将来指導的立場を担う可能性のある学会員」を男女同数で推薦していただいたものです。女性麻酔科医や若手麻酔科医を、支部会での座長や登壇者、各種WGメンバーなどに選んでいただく際に利用してもらう目的です。もう一つの問題点は、「女性会員に座長をお願いしても自信がないと断られる」ケースが多々あったということです。今後推進室では、これまで頂いた意見を参考にし、候補者リストのアップデートも行っていきますが、皆様には今後麻酔科学会を担っていく女性会員と若手会員の育成とご指導をこれまで以上に宜しくお願いします。 さて最後にダイバーシティ推進室で行ったアンケートについてもご紹介させてください。このアンケートは2020年2月14日から3月15日にかけて実施された「男女共同参画に関する麻酔科医に対するアンケート調査」で、ご記憶の先生方もおられるのではないでしょうか。設問はパート1(回答者の背景、ジェンダー問題、ハラスメント問題、キャリア継続問題 計84問)とパート2(キャリアに対する子育ての影響に関する調査の設問66問)にわかれており、全150問と多かったため、回答率は7.2% (953人/13,247人)と低かったものの、多くのことがわかりました。いくつかご紹介します。ジェンダー問題では、職場で女性や性的少数者への配慮があると感じているのは71.5%であるものの (Q46)、昇進などの職業的機会が男女で平等でないと感じているのは約33.8%でした (Q49)。同等の経験があるのも関わらず、優先的に男性が昇進するかの問いには、はいが33.7%でした (Q54)。ハラスメント問題で、職場で性差別主義的な態度や発現があるかの問いに対しては26.2%が有るとの回答 (Q55) で、その対象は、93%が女性に対してでしたが、13.3%にLGBTQなどの性的マイノリティとの回答もありました (Q56)。実際に職場でセクシャルハラスメントが起きた事があるかの問いに対しては、48.0%がはいと回答し、その対象は95.5%が女性でした (Q58、59)。またパート2の設問で子育てと仕事を両立するために必要な事項については、環境整備として保育施設、育児休業取得や働き方改革推進、フレックスタイムの導入などがあげられ、また復帰支援プログラム、スキルアップ研修などの要望も強く、その他の意見として麻酔科医の偏在是正、専門医を維持しやすくしてほしい、麻酔科医の必要性を世間に周知してほしい、といった意見も多くありました。 アンケート結果の要約については、2023年5月に麻酔科学会のHPに掲載しておりますので、是非ご覧いただきご参考にしていただけると幸いです。 ダイバーシティ推進室での取り組みについてご紹介しました。ジェンダー問題以外にも、取り組まなくてはならない問題もあります。われわれの学会を少しでも働きやすい環境とし、多様なバックグラウンドをもつ人々が活躍できるようにするためにも、これからも皆様のご意見をいただけると有難いです。 当学会の対策室は、学会事務局内でのハラスメント問題に対応するために2007年より設置され、初代室長は菊池博達先生がご就任されました。ハラスメント対策室は、学会員の勤務先でのハラスメント相談窓口ではありませんので、誤解のないようにお願いいたします。ハラスメントには様々なものがあります。パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、モラルハラスメントが代表的なハラスメントですが、事務局内で働く職員が精神的・肉体的な苦痛を感じる言動があてはまります。麻酔科学会が正常麻酔科におけるダイバーシティハラスメント対策室115

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