日本麻酔科学会 70周年記念誌
127/168

を構築し、会員・国民にとって分かりやすい専門医制度のあり方に取り組むべきと考える。 私は、理事長就任時の所信表明の一つに「開かれた理事会(活動)」を挙げさせていただいた。これは一代議員の時にも感じたことであるが、議事録ならびに年に一度の社員総会では理事会活動が見えにくいと感じたからである。就任後は、・細かな議事録の公開・ 代議員との任意の意見・情報交換会(10回以上、非公式)・理事長声明以外に理事長メッセージの発出・理事らへの常務理事会議論の伝達・理事長公務報告を心がけた。上手く双方向の意見交換、業務の理解が出来たかどうかは退任後に分かることであるが、所属先業務に加えて、かなり大きなエフォートであったことは理解いただきたい。 上記のように、日本麻酔科学会では、他学会に比較して整備された専門医試験を施行してきた。筆記試験以外にも、実技・口頭試験を課した本学会の試験制度は、他学会の模範となるものであり、知識・技術・態度を評価するのに適したものであることに間違いない。専門医試験は、新型コロナ感染症の影響を受けて、試験そのもののあり方についても検討する時期に来ている。具体的には、・ 実技試験:1)認定施設を厳密化し経験すべき症例数を提示しているのであれば省略する。2)現在施行している施設長の評価表を継続する。3)学ぶべき手技をシミュレーション受講で証明する。・ 筆記試験:1)どの地域でも不平等なく受験できるコンピュータを用いた試験を継続する。2)将来的にはComputer-based test (CBT) を導入する。※ちなみに、ESAIC (European Society of Anesthesia and Intensive Care) では既に実行され、EU以外の諸外国でも活用されている。・ 口頭試験:1)問題間格差、試験官格差のない試験を目指す。2)再挑戦の機会を与える。などいくつかの方策が考えられる。 一方で、専門医を名乗る以上、国民に分かりやすくかつ均一な医療を提供する専門医制度のあり方が望まれ、日本専門医機構が発足した。紆余曲折があり、機構専門医の開始まで時間がかかったが、現在はどの学会も機構専門医への移行に向けて進んでいるのが現状である。本学会でも、どのような働き方をする会員に対しても多様性を反映した形での移行制度に尽力しているが、多様性を反映すればするほど、機構専門医への移行パターンを多く準備し、分かりづらくなっている点はご容赦いただきたい。 また、標榜医制度はわが国の麻酔科の専門性を高めたことに一役を担ったことは間違いない。一方で、保険診療制度上、標榜医取得が優先されているが、学会が認定する認定医と指導医、機構が認定する専門医は保険診療には紐付けられていない。今後は更新制度がない標榜医制度のあり方検討、機構専門医であることが保険診療に紐付くような働きかけも必要となろう。 最後に、指導医であるが、現時点で、本学会では指導医のあり方を明言・規定してはいない。それを望み、専門医の上位にあるべき資格として厳格化すべきとの声も聞く。一方で、学会では認定施設の要件として機構専門医以外に学会での資格を求めている。つまり、学会認定医あるいは学会指導医を持っていることが必須となる。したがって、講習受講や更新基準が厳しい機構専門医以外に、実際に麻酔関連業務に携わっているのであれば比較的維持しやすい指導医の資格も検討する余地がある。 日本麻酔科学会としては、その周辺領域とし理事長総括専門医制度他学会との連携119

元のページ  ../index.html#127

このブックを見る