て、1970年に創設された日本集中治療医学会や日本救急医学会、そして1980年代と1990年代に創設された日本ペインクリニック学会ならびに日本緩和医療学会との連携を強固にしてきた。これら領域は麻酔科専門医にとってのサブスペシャルティ領域として重要な分野である。サブスペシャルティは現在、日本専門医機構が整備を進めており、救急専門医は基本領域として、集中治療専門医は2024年から機構認定のサブスペシャルティとなり、ペインクリニック専門医ならびに緩和医療専門医も、日本麻酔科学会が認定、機構が承認するサブスペシャルティ領域として準備を進めている。 厚生労働省からは、「初期研修中に麻酔科を選択した場合、上記サブスペシャルティ領域での研修を含めた研修マニュアルあるいはガイドラインを作成し、それに準拠した研修を行うよう」指導を受けている。教育委員会で検討中である。 周術期麻酔管理に限っては、超高齢化に加え、最近の手術技術の向上や医療機器の進歩、そして複雑化する手術術式に合わせ、我々麻酔科医の学ぶべき領域も拡大している。そのため、1990年代に創設された日本小児麻酔学会や日本心臓血管麻酔学会、2000年代に創設された日本老年麻酔学会や日本産科麻酔学会、日本静脈麻酔学会、そして2010年代に創設された日本区域麻酔学会や日本周産期麻酔学会、気道管理学会などでは、本学会会員が本学術集会では得ることの出来ない技術や知識を得る機会となっている。会員がさらにこれら領域においても活躍・研修が出来る機会を提供する必要がある。 2024年から医師の働き方改革が導入され、タスクシフトの必要性が増している。厚生労働省の指導により、特定行為研修修了看護師の活用が求められている。我々は、本邦における麻酔科医療の安全と質を担保するために、種々の関連団体と意見交換をした後、「麻酔関連業務における特定行為研修修了看護師の安全指針」を発出した。地域によってはそぐわない安全指針であることは理解しているが、現時点では麻酔科専門医と看護師の麻酔症例は1:1とさせていただいた。日本麻酔科学会が発足して70年経った今、本邦における麻酔管理の安全性と質は欧米のそれと同様あるいはそれ以上のものであると自負している。研修修了看護師の育成と業務内容を見ながら、数年後に複数麻酔管理についても議論の余地があると感じている。また、日本臨床工学技士会とも連携に、これに準じた安全指針を検討中である。多くの多職種医療者が我々麻酔科医とともに、安全・安心な周術期管理に携わることが出来るよう期待する。また、多くの多職種医療者が学術集会にも参加してもらい知識や技術に関して共通認識を持つ必要もある。今後、学術集会に参加しやすい環境も模索すべきである。 歯科麻酔に関しては、研修ガイドラインを逸脱した症例・施設が散見されることが、先の厚労省科学研究によるアンケート調査でも明らかになった。現在、日本歯科麻酔学会と連携し、新たなガイドラインの発出ならびにE-learningの作成を検討中である。 これに関しては現状分析のみであり、効果的な方策は現時点では見いだせていない。・ 2004年から始まった初期臨床研修によるマンパワーの減少と大学離れ大学の法人化に伴う収益優先の影響による研究時間の減少これらが日本の学術低下に影響を及ぼしたことは事実であるが、加えて専門医更新のための講習受講数の増加など、“専門医の取得と更新”が臨床医の大きな目的になっているのも影響していると想像する。日本麻酔科学会は、手術を受けられる患者さんを術前術後を含めて管理してほしい理由から、常勤3日/週以上の常勤勤務多職種との連携麻酔科学研究の底上げと推進120
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