ている。2003年は代表的な三誌の掲載論文数がピークであったことから、日本からの論文が多様な 1954年に「日本麻酔学会」が設立され、同年10月に第1回学術集会が開催されてから、70年の歳月が経過した。この間、日本の麻酔科学研究はいかなる軌跡を辿ってきたのか。ここでは、英文論文数と学術集会演題数を研究力の指標として、麻酔科学研究の歴史を振り返り、その未来を予測し、我々の果たすべき役割について意見を述べたい。 麻酔科学領域の代表的な三誌、Anesthesiology、Anesthesia & Analgesia (A&A)、およびBritish Journal of Anaesthesia (BJA) に掲載された日本の研究施設からの論文数について、PubMedを用いて検索を行った。“Japan AND雑誌名 [ta]”で検索し、ヒットした論文のうち、日本の病院麻酔科および大学麻酔科から投稿された論文を抽出した。また、研究論文と症例報告論文の合計を論文数として集計した。検索できた1987年から2023年までの推移を図1に示す。1980年代から増加し、2000年頃にピークを迎えていることが確認できる。 黎明期より麻酔科学の発展を目指し、多くの麻酔科医が海外に留学して基礎研究を学び、研究成果を上げつつ、研究手法を国内に持ち帰り、研究基盤を築いてきた。論文数の増加は、先駆者たちが築いた基盤が着実に成果を上げてきた証といえる。筆者が専門とする疼痛研究領域では、1970年代からYale大学のKitahata LM教授のもとに多くの日本の麻酔科医が留学し、脊髄細胞外電位測定を用いた疼痛研究を学び、その成果を日本に持ち帰ってきた。その結果、1990年代からは日本国内の麻酔科研究室での疼痛研究が盛んとなり、多くの研究成果が代表的な三誌に掲載されてきた。 しかし、その後、論文数は減少し、近年では1980年代の水準まで低下している。日本麻酔科医会連合学術推進プロジェクト会議の調査による代表的な三誌を含めたインパクトファクターが付与されている麻酔科学関連雑誌への日本からの掲載論文数の推移(2003年~2022年)を図2に示す[1]。インパクトファクターが付与されている麻酔科学関連雑誌への掲載論文数はわずかな減少にとどまっ雑誌へシフトしていることが伺える。表1には主な麻酔科学領域雑誌のインパクトファクターを示す。インパクトファクターが2-3程度であるJournal of Anesthesia、BMC Anesthesiology、及びJournal of Cardiothoracic and Vascular Anesthesiaでの日本からの採択論文数は2002年に比べ2022年日本麻酔科学会学術委員会和歌山県立医科大学医学部麻酔科学講座記念シンポジウム70周年記念シンポジウム 記念講演会収載第1部 1.麻酔関連英文雑誌への日本からの掲載論文数の推移8川 股 知 之日本の麻酔科学研究の振り返りと 今後の取り組み
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