日本麻酔科学会 70周年記念誌
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 CCSは医事紛争処理が終了した事案 (Closed Claim) を対象に、その原因と防止策を解明するライン刊行にも大きく寄与した。(古家 仁)143 歯科医師による医科診療の法的問題が顕在化したのは2001年の市立札幌病院事例である。同病院救命救急センターでは1997年から歯科医師の救急医療研修を受け入れてきた。現場では気管挿管や大腿静脈カテーテル挿入等を単独で実施していたが、2001年6月に突然、地元新聞による「歯科研修医が専門外治療」の報道がなされたのである。 この事例は警察の介入するところとなり、2002年1月に指導医1名と歯科研修医3名が書類送検され、結局指導医のみが起訴された。2003年3月に一審にて有罪、2008年3月に二審にて控訴棄却となり罰金刑6万円の刑事罰が確定した。ことで、同種事案の再発防止に繋げる活動である。本会では医事紛争対策委員会(後の医療事故専門部会)でこのproject (CCP) が企画され、2001年に損害保険会社が保有する処理終了事案を対象とすることで、新たに保険会社とCCPに関する契約を結んだ。個人情報の漏洩防止と守秘義務は厳守とされた。調査手法はASAのCCPを参考にすることとし、その責任者であったFW. Cheney先生を、大村昭人先生のご紹介で学術集会に招請したことで、その実情を知ることができた。教授された調査手法を参考にCCPを組織化し、2003年10月から保険会社案件の実地調査が始まった。CCPは後にCCSと改称した。 周術期の肺血栓塞栓症はいったん発症すると死に至ることもある麻酔科医にとって非常に重要な偶発症である。欧米では1990年代にその疫学、診断、予防等に関するガイドラインが刊行されるようになったが、当時本邦ではガイドラインだけでなく周術期の全国規模の発生率、死亡率などのデータも存在しなかった。麻酔科学会では2002年から「肺血栓塞栓症ガイドライン作成ワーキンググループ」が中心となって詳細な「周術期肺血栓塞栓症発症調査」を開始し、その結果を毎年学会等で発表した。そのデータは2004年のわが国の初のガイドライン発刊、その後のガイド市立札幌病院救命救急センターでの歯科医師の医科診療の報道CCS (Closed Claims Study) 開始周術期肺血栓塞栓症発症調査開始年表・医療事件・(澄川耕二)・日本麻酔科学会・(河本昌志)・日本麻酔科学会・2002年4月6月

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