日本麻酔科学会 70周年記念誌
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官庁制・許可主義を廃止し、法人とその公益性を分離した法律が施行された。そして、従来の法人は、2011年までに公益社団法人か自由度の高い一般社団法人を選択する必要に迫られた。日本麻酔科学会は、迷うことなく医学会の先陣を切って公益社団法人を申請、獲得した。公益法人として社会的な信用度が高まり、税の優遇措置を得たが、その代償として行政庁の監視下に置かれ、事業活動に多くの制約を受けることにもなった。麻酔科学会は“麻酔科医”の為の法人でなく、“日本国民”の為の法人として権利と義務を負うこととなった。 「麻酔資料館」開館後の2年間でおおよその資料を集めることができたので、収集物に合わせて館内の改修を行い、2011年5月19日に「麻酔博物館」として開館した。また、ほぼ10年ごとの改修を予定して、予算立てを行っている。2012年5月から館長を設置した。 「麻酔博物館」に関する委員会は2年ごとの特別委員会であったため、2017年より常置委員会とした。常置委員会の委員は委員会細則により頻繁に交代するため、麻酔史や博物館に精通したメンバーで構成する館員ボードを設置し、「麻酔博物館」の維持に当たることになった。 2008年に名誉会員の松木は並木昭義理事長に「松木賞」の創設について理事会で検討して戴くことを提案した。その理由は、日本では麻酔科学の諸分野で優れた研究がなされているが、麻酔科学史の研究に関しては極めて低調で、1970年以来松木1人が細々と行ってきただけであった。研究をより盛んにするためにはそれなりの動機と優遇措置が必要であると考えて「賞」の創設を考えた。提案は最終的に2009年9月の社員総会で承認された。賞金の原資3,000万円は松木が長年収集してきた稀覯本を売却して充てた。したがって「松木賞」が制定されたのは2009年である。2011年に土手健太郎氏が最初の受賞者となった。 2012年3月、海外の複数ジャーナルが藤井氏論文の捏造疑惑を発表し、これを受け本学会は直ちに調査特別委員会を設置した。藤井氏の212編の原著論文を調査対象とし、生データ、実験ノート等の精査、研究実施施設における症例実態、薬剤使用実績、麻酔記録等の調査、藤井氏本人と共著者への面接等を実施した。その結果は、捏造なし3編、捏造あり172編、判定不能37編とい(森田 潔)・日本麻酔科学会・(武田純三)・日本麻酔科学会・(松木明知)・日本麻酔科学会・「麻酔資料館」を改修して「麻酔博物館」として開館第1回松木賞元会員藤井善隆氏の論文捏造に関する理事会声明年表1492012年8月5月19日

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