日本麻酔科学会 70周年記念誌
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う内容であった。調査結果を受け、学会として同氏に対する厳正な処分を検討していたが、その前に同氏より退会届が提出された。8月に理事会声明を発表し、同氏の再入会は永久に認めないこと、研究活動の不正防止に向けて努力を継続すること等を明言した。 21世紀に入り、麻酔科の診療が手術室に限定されたものから、手術室外へと急速に拡大した。特に、手術と直接関連しない慢性疾患が周術期のリスクとして重要であること、そして術後疼痛管理が早期離床・退院に深く関わることが明らかになったためである。この変化に対応するためには、多職種連携の環境整備、つまり看護師、薬剤師、臨床工学技士、歯科口腔外科医・歯科衛生士がそれぞれの専門性を発揮しながら協働する体制を作る必要が生じた。 2006年に総務委員会でこの新しい仕組みの検討が始まり、日本手術看護学会、日本病院薬剤師会、日本臨床工学技士会との合同企画として、周術期管理チーム・プロジェクトが2008年に立ち上がった。2015年には日本口腔外科学会も本プロジェクトに参加することとなり、2008年には、最初の周術期セミナーが開始され、2010年には『周術期管理チーム・テキスト』を発行するにいたった。このテキストは版を重ね現在、第4版が入手可能である。 つまり、本プロジェクトは診療スタッフの教育環境を整備することから始まったが、その成果を客観的に評価するために、認定制度が導入された。まず、看護師の認定試験が2014年に導入され、 2016年には薬剤師、2017年には臨床工学技士の認定へと拡大した。 初回の認定試験では、看護師175名。薬剤師88名、臨床工学技士8名が認定されたが、現在までの認定者は、それぞれ、看護師3,561名、薬剤師603名、臨床工学技士274名に上る。 2024年には『医師の働き方改革』が開始された。医師の時間外労働の軽減がゴールのように誤解されているが、『良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律 (2021年5月28日公布)』にもあるように、医療の質を担保しながら効率化を推進することがゴールである。 日本麻酔科学会が進めてきた『周術期管理チーム』は、20年近い歴史の中で、常に多職種連携による効率化と医療の質の向上を両立させてきた。これからもデジタルトランスフォーメーションや AI を活用することで、更なる高みへと推進してほしい。 機関誌Journal of Anesthesiaのインパクトファクター (IF) 増のため、引用が少ない症例報告の採択率を下げ、これら症例報告の掲載先となる機関誌としてJA Clinical Reportsが2015年8(澄川耕二)・日本麻酔科学会・(落合亮一)・日本麻酔科学会・周術期管理チーム認定試験(看護師)開始「The Journal of Anesthesia Clinical Report (オンライン)」創刊1502014年2015年8月12月27日

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