日本麻酔科学会 70周年記念誌
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(廣田和美)・日本麻酔科学会・(近江明文)・医療事件・・医療事件・月27日に創刊された。編集長は、初代が札幌医科大学医学部麻酔科学講座教授の山蔭道明氏 (2015-2017年)、二代目が弘前大学大学院医学研究科麻酔科学講座教授の廣田和美(2017-2021年)、2021年からは大阪市立十三病院麻酔科部長の小田裕氏が三代目を務めている。投稿論文数は、初年度は53編であったが、2023年度は245編と年々増加している。また、2022年にIF 0.9点が付いた。 1990年代後半から欧米を始め本邦でも医療による重大な有害事象が注目され、とくに手術関連の医療過誤が世界的に大きな社会問題として取り上げられた。WHOは手術関連の死亡・重大合併症を世界規模で減少させるために、2009年に「WHO安全な手術のためのガイドライン (GL) 2009」(英文、全123頁)を発刊し、そのためのツールとしてサインイン・タイムアウト・サインアウトの3項目からなる「WHO手術安全チェックリスト (CL) 改訂版」をも公表した。また2010年に欧州麻酔科学会 (ESA) は当CLの積極的活用などを含む「麻酔科学における患者安全のためのヘルシンキ宣言」を採択した。 日本麻酔科学会はこれらの状況を踏まえ、手術安全のための10目標をも明示しているWHOのGL2009を他学会に先駆け日本語翻訳し、麻酔科学会HP上に手術安全CLとともに掲載し、手術安全推進の一助としたのである。 看護師の特定行為研修制度は、定型的な処置等ではあるが、医師が直接判断あるいは実施するのでは迅速性が失われる恐れのある医療行為を、研修を修了した看護師が医師の指示がなくても「手順書」と呼ばれる事前に申し合わされたプロトコールに従って実施可能とした制度である。保健師助産師看護師法を改正し、研修制度を整備した上で開始された。この制度において、どの医療行為を「特定行為」とするかでは多くの議論がなされた。麻酔科領域で最大の論点となったのは気管挿管の取り扱いであった。最終的に既に挿入されている気管チューブの位置の調整までということで決着したが、団体ごとに意見が大きく異なることが浮き彫りとなった。(齋藤 繁) 日本初の専門医制度として1963年に麻酔科専門医制度が開始された。2014年に日本専門医機構「WHO安全な手術のためのガイドライン2009(日本語訳)」看護師の特定行為研修制度開始日本専門医機構専門医制度開始年表1512018年4月10月3月31日

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