日本麻酔科学会 70周年記念誌
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が出されたが、結論は曖昧であった。このために1987年に第2次の「あり方委員会」が設置されて種々検討されたが、最終的に「7地区案」に落ち着いて、2001年の法人化を迎えた。 俯瞰的にわが国の麻酔科学史を眺めると、太平洋戦争敗戦前後に2度のいわゆる「失われた20年」が存在したことが分かる。 敗戦前の「失われた20年」は1924年から1945年に至る約20年で「全身麻酔蔑視論」の時代である。ドイツ医学に傾倒していたため局所麻酔法が全盛で、全身麻酔法や呼吸管理は軽視された。1930年代後半にはアメリカの最新の気管麻酔の情報がもたらされたが、全く無視された。敗戦後の「失われた20年」は1973年から1990年にかけての約20年で、学会のエネルギ−は麻酔科と麻酔科医の社会的地位向上のために使われることなく、「会長選考」という不毛な内部問題に消費されたに過ぎなかった。 今後の理事会には日本麻酔科学会を日本の医学界、さらには世界の麻酔科学界の中でいかに処して行くかが求められている。そのためには理事1人1人が確固たる哲学と史観を持つ必要があろう。 本講演は演者が以前に取材した下記の方々のご教示によるところが多い。いずれも故人になられた。深く感謝して、ご冥福を祈念する。 天野道之助、稲本 晃、岩月賢一、清水健太郎、田中憲二、遠山たみ(永江大助長女)、山村秀夫 (五十音順)70周年記念シンポジウム 記念講演会収載15

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