会から出された安全管理指針[14-16]においてはその業務を厳しく制限している。当該指針作成の目的として特定行為研修修了看護師、診療看護師、認定看護師、医師が対象として、手術室における麻酔関連業務の特定行為を実施するのに必要な、医療安全の確保を目的としている。しかしながら、対象となる施設は、日本麻酔科学会認定病院であるものの、気管チューブの挿管、抜管は麻酔の導入及び覚醒にあたるとしてこれらを制限するものとなっており、医政局看護課長通知(平成27年10月1日、医政看発1001第1号)[17]は実施する場面等を具体的に示しておらず、臨床麻酔の現場で混乱がおきていると記載している。一方で当該通知については、「経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの挿管」、「経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの抜管」(中略)については、従前どおり、看護師及び准看護師(以下「看護師等」という。)は、診療の補助行為として、医師又は歯科医師の指示の下行うことができるものであること。と記載されており、国としての考え方を示している。おそらく個別の学会が発出する指針等について特段コメントはしないものと推察しているが、日本の医療を俯瞰した視点が求められているのではないか。 行政として日本麻酔科学会に期待していることとしては、第一に質の高い安全な麻酔の実施と医療全体を俯瞰した周術期における安全管理が求められている。これは当学会が公益社団法人であることからも医療全体を俯瞰することは重要であると考えられる。さらには、手術室内でのリーダーシップやタスクシフト/シェアを推進し、内視鏡検査やアブレーション等における鎮静等手術室外へ進出していくことも重要である。また、他学会では既に実施されている教育ツールを提供する等臨床研修医への教育の機会も求められているものと思料している。 日本麻酔(科)学会設立70年を迎え、当学会の功績は非常に大きいと考えている。一方で今後麻酔科医師数の増加は期待できず、特定行為研修修了看護師の活用等にも安全上の理由から制限を設けている現状において日本の医療に対してどのような展望を描いているのか等、日本麻酔科学会の在り方について再検討が必要ではないか。日本麻酔科学会には、今後の人口減、高齢化を踏まえた安全な麻酔管理について医療全体を俯瞰した質の高い医療、良好な患者アウトカムが得られるような活躍が期待されている。 なお、本稿における内容は私見であり、組織としての意見等を示すものではないことをお断りいたします。参考文献[1] 松木明知.日本における麻酔科医の社会的地位と麻酔指導医・麻酔科標榜医の意義.日臨麻会誌 2019;39 (5):586-591[2] 厚生労働省.麻酔科標榜医に係る手続案内.https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_ 10587.html[3] 日本麻酔科学会.麻酔科医マンパワー不足に対する日本麻酔科学会の提言.2005年2月9日.https://anesth.or.jp/files/download/news/suggestion20050209_1.pdf[4] 日本麻酔科学会.麻酔科医マンパワー不足に対する日本麻酔科学会の対策案.2008年8月7日.https://anesth.or.jp/files/download/news/suggestion20080807.pdf70周年記念シンポジウム 記念講演会収載行政が日本麻酔科学会に期待していることまとめ21
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