当初、この学会で松本会長から特別講演を依頼されたとき、タイトルを「ちょい悪マネジメント」にしたが、学会事務局の人から「人たらしマネジメント」が良い、という示唆を頂き、インパクトがあったので通りにした。 私が「人たらし」で気が付くのは、豊臣秀吉、坂本竜馬、そして、近年では田中角栄といったところである。 近年、組織・チームのマネジメントが上手く機能せず、職場がギスギスしていると聞こえてくる。時代が変わってきたからなのか。気まずさの原因はコミュニケーション・マネジメントにあると思われている。 いま、時代はVUCAと言われている。世界中で社会の大きな変革が進みつつある。VUCA (V:Volatility不安定、U:Uncertenty不確実性、C:complexity複雑性、A:ambiguity曖昧性)の時代と言われるようになって久しく、わたしたちは、経験によって培われた既存の「知識」や「経験」だけでは、課題を解決できない世界に生きている。人は予測のつかないものや確信が揺るがされることを避けようとする。その結果、可能な限り不確実性を排除し、何かしらの答えを常に探し求めているのではないか。 しかし、拙速に答えを求めることをせず、不確実性の感覚に興味を抱いたまま、その先にある発展的な深い理解を待ち続ける能力=「対話する能力」が、VUCAの時代を生き抜くために必要である。単なるコミュニケーションだけではない。コーチングにおける「対話」では、既に十分理解している(と思っている)ことも、一度手離し、そのテーマについてお互いに観察することで、捉え方や意味づけに変化が起き、最初は見えていなかった本質も徐々に見えてくる。 これからの未来の社会・企業・人に必要な「対話」とは何か、企業・組織での効果的な導入方法、コーチングと「対話」の関係、データからみる効果的な実践方法など、様々な視点から「対話」について考察する機会である。1 .「上司の言うことは正しい」という前提、権威と権力があるだけで「自分は正しい」というやっかいな前提畑埜クロスマネジメント CEO元和歌山県立医科大学麻酔科教授病院長記念講演70周年特別企画講演70周年特別企画講演第1部 上司と部下の関係性35畑 埜 義 雄人たらしリーダー
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