てるところやから、謝れないなら、ここから出て行ってくれ」 突然厳しい叱責を受けた塾生は、幸之助の迫力に圧倒され、「(松下)塾長、すみません! これから実習へ行ってきます」と言って販売店へ戻って行った。 その場に居合わせた他の塾生たちは、その時の光景が脳裏に刻まれると同時に、人の心を動かす上で何が大切かを教わったという。 日々の生活や仕事をするとき、あるいは人と関わるとき、「自分は正しい」という前提に固執しないことが大切である。もちろん自分が正しく、そのことに自信をもつべき場面もあるでしょう。しかし、「100%正しい」と言い切れるだろうか。数%でも自分に間違いがあるならば、そこに意識を向けていくスタンスが求められる。 そうした日々の努力が、自らのメンタルモデル(人間が無自覚のうちに持っている、思い込みや価値観)を更新し、謙虚に学ぶ姿勢や、相手を尊重する思いやり、違いを受け入れる度量などが育まれ、人と組織を動かすリーダーシップの発揮につながる。リーダーは「自分を開かれた状態」に、「攻撃されやすい状態」におく。『リーダーは弱みを見せろ―GE、グーグル 最強のリーダーシップ』―鈴木雅則 著 2003年、阪神の星野監督時代に優勝した。まさに星野監督のカリスマ性を感じさせた。しかし、20年後の2023年「あれや」岡田監督のもとで阪神が優勝すると、組織の強さを示す「カリスマ性」は去った。 リーダーのプライドが高いと、部下との距離感が出てくる。リーダーは一所懸命を見せようとする。上司は、部下が遠ざかるリーダーになると、一所懸命を見せようとする。何でも自分でやろうとするリーダーは…権限委譲ができず、人は育たない。リーダーは、弱みを見せろ 謙虚なリーダーシップ――(光文社新書リーダーは弱みを見せろGE、グーグル 最強のリーダーシップ鈴木雅則/著)1人のリーダーに依存しない組織をつくる。自分の弱さを受け容れ、本音を伝え合う関係が、組織を変える。 自己認識、これが無いと潰れてしまう。能力の低い分野では、「自分の能力」と「自分以外の人の能力」の差を正しく評価できない。それが、自分を過大評価する傾向につながる。 リーダーの「自己認識力」 と組織の業績の関連性70周年特別企画講演自らのメンタルモデルを更新するしなやかな強さを持つリーダーにリーダーは、プライドを捨て、弱みを見せる時代リーダーとして自己認識37
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