日本麻酔科学会 70周年記念誌
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 日本麻酔科学会は2024年6月の第71回学術集会で70周年を記念するイベントを行った。まずオープニングセレモニーで、松本美志也学会長と山蔭道明理事長が挨拶した後、小澤章子副理事長から70周年記念事業の取り組みについてしっかりとした説明があった。そして最後に70年間を1分間にまとめたビデオが流された。超倍速で画像が流れ、70年間の歩みが走馬灯のように駆けていった。倍速視聴になれていない私が、人物として確認できたのは学会設立者の一人、山村先生のお顔ぐらいだっただろうか。真言の教えを回すチベット仏教のマニ車のように、70年史の回転映像を見るだけで麻酔の功徳が得られる仕掛けになっていたのかもしれない。オープニングセレモニーの会場には、残念なことにわずかの会員しか来ていなかった。私としては、70周年記念のオープニングなのだから、学会員で満員の会場になってほしかったのだが、例年と同じように、人数的には寂しいオープニングだった。 2日目の午前中に開催された70周年記念シンポジウムも200人程度の参加者だっただろうか。1万4千人超の学会員がいる日本麻酔科学会の、記念すべき70周年記念シンポジウムに、これだけしか集まらないのはどうしてだろうか。興味がないのだろうか。単位取得につながらないからだろうか。 私は、このような集まりこそ麻酔科専門医のための必修講習にすべきだと思う。麻酔科の専門医なら、日本麻酔科学会の成り立ちと目指すところを知るべきだし、この場こそ、会員としての、専門医としての自覚を涵養できる、必修の場ではなかっただろうか。70年間の先輩麻酔科医たちの血涙の歴史を、今の麻酔科医たちが己の血肉にするための機会であって欲しかった。「麻酔科医のプロフェッショナリズムとはなんぞや」を、がつんと、知らしむべき機会だった。 70年前に学会の発足に尽力した人たち、その後、麻酔科医の存在意義を知らしめるべく懸命に頑張ってこられた亡き先輩たちも、参集者の少なさに寂しい思いをしたことだろう。ただ、松本学会長が「70年前の麻酔がどんなに大変だったかを想像すると・・」と慰労と感謝の言葉を述べられたので、先達たちもほっとされたことだろう。 2013年から2017年までの4年間、私は5代目理事長として学会の運営に携わった。最初の2年間は、常務理事に山田(副理事長)、上村、九州大学名誉教授法人化、公益社団法人化<理事長時代>第2部 寄 稿法人化、公益社団法人化<はじめに>39外  須 美 夫理事長時代 (2013-2017) を振り返る

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