1主旨説明 公益社団法人日本麻酔科学会は、前身の日本麻酔学会が設立された1954年から数えて、2024年に設立70周年の節目を迎えました。70周年記念事業WGが組織され、記念事業の一つとして、この70周年記念誌を編纂することとなりました。WG長を拝命しました立場より、本記念誌の企画趣旨をご説明申し上げます。 日本麻酔科学会は、2004年6月7日に50年史を発刊しております。当時は2001年の社団法人化からまもなくのことでした。江戸時代以前の麻酔科学から、戦後麻酔科学会の発足以後、医学界において麻酔科という診療科を確たるものにし、本邦の医療に貢献する礎を築いてきた経緯を詳細にまとめた50年史を踏まえ、本70周年記念誌は、そこから現在までの20年に焦点を当てました。この間、日本の麻酔科学の先駆者である、山村秀夫先生、天野道之助先生が共に2017年にご逝去され、世代の移り変わりが実感されております。 この20年の医療界は、2004年の新臨床研修制度の導入による医療現場の混乱、地域病院からの大学病院医局派遣医師の引き上げなどに象徴される、いわゆる医療崩壊、これまで医師の過重な労働に支えられてきた医療現場の労働環境を見直す、医師の働き方改革新制度の施行、医師の診療科・地域による偏在対策の実施といった行政の動きが見られる一方、医師による研究活動の低下など、診療科としての将来が危ぶまれる深刻な事象が報告されております。 日本麻酔科学会も例外なくこうした影響を受けて参りました。2011年に公益社団法人へ移行し、順調に会員数を伸ばして参りましたし、新しい麻酔薬やデバイス、モニターの登場によって安全性も向上しました。無痛分娩や手術室外検査・処置の鎮静な東京大学大学院医学系研究科外科学専攻生体管理医学講座麻酔科学主旨説明挨拶 内 田 寛 治70周年記念誌作成に あたって
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