日本麻酔科学会 70周年記念誌
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 この間、医療安全の取り組み(デュプリバン事件やCO2ボンベ問題など)も多々あったが、割愛する。つらい話題として麻酔科医の倫理性の欠如がある。一つは、麻酔科医による論文捏造で、もう一つは、フリーター麻酔科医による多額の報酬要求である。麻酔科医F氏の大量の論文捏造が2012年に明らかになり、学会として調査し、処分を行った。しかし、その後も麻酔科医による論文捏造や不正が続いたことから、学会として臨床研究に対する倫理指針の徹底を行った。また、麻酔科医の多額報酬には、病院や外科系から麻酔科医の品性を疑問視する意見が寄せられ、学会としての対応も求められたが、効果的な対応策を見いだせないままだった。フリーター麻酔科医の中には、誠実に働き、地域医療を懸命に支えている人たちもいれば、金儲け主義で常識に欠ける人たちもいるなど様々で、学会主導の画一的な対応はできなかった。 学術的には、学会の機関誌であるJournal of Anesthesiaのインパクト・ファクター (IF) が1.0を超え、JA Clinical ReportsのOnlineジャーナル化が始まった。また、理事代議員の女性枠新設が実施され、新しい執行部に占める女性の割合が増加した。 私は、2016年に学会長を務めた。その時に、ぜひやりたかったのはオープニングセレモニーの導入だった。学会が巨大化し、社団化し、代議員(社員)制度の中で会員一人ひとりの学会所属意識が薄れつつあるのを憂いてのことである。学会員は、ニュースレターやホームページで、役員の顔、執行部のメンバー、学会の方針や活動を知ることはできるが、直に顔を合わせ、発言を耳で聞いてこそ、同僚意識 (collegiality) が育っていくのではないかという思いからだった。 理事長時代、楽しいことも多かった。とくに全国から麻酔科の部長や教授たちが集まり、3泊4日で神戸のホテルに缶詰になって、専門医試験の面接や監督、審査を行うイベントは、大変な作業だったが、最終日の打ち上げは盛り上がり、全国の麻酔科医と交流できる楽しい場になった(写真)。写真:専門医試験の打ち上げ 2013年、神戸6 その他42

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