麻酔薬使用中のエピネフリンによる不整脈等のリスクについての調査を発表[43]。2010年 厚生労働省医薬食品局安全対策課の審議会を経て、エピネフリン含有薬剤の併用禁忌から全ての吸入麻酔薬を削除を達成。2019年 最新の第3版第4訂をHP上で公開。この年に発足した医薬品ガイドライン改訂WG(竹内 護WG長)が中心となって、薬理作用による9つの分類と、安全性が確立していない産科・小児・ペインクリニックの3つの領域、合計12に分類し、308品目の医薬品(重複含む)を対象としている。 現在、日々更新される薬剤情報とエビデンスに対応すべく、ガイドライン更新の検討と新たな保険適応の要望を行っている(祖父江和哉部会長、山浦 健WG長)。・薬剤シリンジラベルに関する提言2009年 本学会が行った「薬剤インシデント調査2005~2007 年」で、麻酔中の誤薬・誤投与のインシデント発生率は少なくとも39.2例/10万症例で、その原因は「シリンジ選別段階での誤り」が最多の44.2%と明らかとなる[44]。2015年 国際標準化機構 (ISO) や諸外国の麻酔科学会は、カラーコード等のラベル標準化を推奨していることから、誤薬防止のためのシリンジラベル薬効別色分けの提言検討WG(祖父江和哉WG長)が「薬剤シリンジラベルに関する提言」を制定。2016年 調査を報告[45]。2017年 提言の英語版発行[46]。2019年 調査第2報を報告[47]。 麻酔および麻酔科医のリスク対応についての活動を長年行っている。とくに麻酔件数の増加に伴うチーム医療とリスクマネジメントは、急速かつ複雑となっている。2003年に国立病院が独立行政化され、急性期病院では手術室運営が経営の中心となった。麻酔科医不足ではあったが、本学会は「麻酔は麻酔科医が行う」という基本方針で活動した。本学会の会員数は増加したが、麻酔件数の方が増加率は高かった(表3、図1)。結果として麻酔科医不足は変わらず、働き方改革が2020年に法制化され2024年から本格運用されたこともあり、麻酔に携わる人材の必要性と多様性が増える時代となっている。 麻酔科医のための各種安全対策に加え、看護師、診療看護師、臨床工学技士、薬剤師、助産師、歯科麻酔科医および医療機器(とくに麻酔薬投与および麻酔管理についての先進的な装置)についても、安全管理を保ちながら専門職の特性を活かした高度な診療とケアで、国民のニーズにどう応えるかを長年検討している。◆薬物依存症対策2013年 「麻酔科医による医療用麻薬自己施用に関する理事会声明」発出[40]。麻薬の乱用は入手経路などから法的問題となりえるが、薬物依存は個人的な疾患でもあることから、早期発見と治療・救済の視点も考慮。 現在、届け出や相談のあった会員の案件について、依存からの離脱の支援、さらに更生のためのNPO法人などの紹介を事業化[48、49]。支援プログラムは厚生労働省、日本医師会などと連携して、薬物依存症防止のための啓発、教育活動を推進。◆感染対策 ICD(インフェクションコントロールドクター) 協議会と協力して、ICD制度協議会運営WGが年次学術集会においてICD講習会を企画し、麻酔科関連業務にかかわる感染対策や術後感染症。術後肺炎予防などに関する情報を発信している。会員のICD認定を推奨しており、学会が申請窓口として機能している。2017~2023年 合計53名の会員を認定。2020年 COVID-19対応で医療の提供の安定のため学会内に加え、厚生労働省、関連学会、企業周術期安全Ⅳ.リスクマネジメント部門51
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