私は横浜市立大学で2016年6月から2024年3月までの約8年間、本学附属の2つの病院で病院長を務めてきた。その間、2020年1月に横浜に寄港した大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号を発端とし、2023年5月9日に感染症5類に変更されるまでの約3年半のCOVID-19パンデミックを経験した。現代において人が一生にパンデミックを経験する確率が38%であり、これからさらに高くなると言われている中で[1]、今回のCOVID-19パンデミックで麻酔科医の果たした役割について振り返り、次のパンデミックに備えて麻酔科医が準備すべきことについて考察したい。 図1に示すように、COVID-19は2023年5月8日に行政による全数把握が終了するまでに合計8つの波を作って日本を襲い、ウイルスもα、δ、オミクロン株と変異していった(変異しやすいのはコロナウイルス全般の特徴である)。この頃欧米では日本より一桁多い感染者数と重症患者数を抱えて集中治療室がパンクし、人工呼吸器や呼吸管理のための鎮静用のプロポフォールが世界的に不足するなどの事態が生じた。 COVID-19のパンデミックはあまりに大規模麻酔科医師活動範囲の拡大横浜市立大学大学院医学研究科・医学部 麻酔科学図1 全国の感染者数と重症者数の推移だったため、第一種感染症指定医療機関はすぐにパンクした。しかし未知のウイルスであること、ワクチンもないこと、感染力が非常に強いこと、当初は容易に重症化し死に至ったことなどから、受け入れ病院が広がるまでに相当の期重症者とは、酸素飽和度90%以上を維持するために酸素投与が必要な患者(厚生労働省の定義)出典 NHK 新型コロナウイルス特設サイト https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-all/ 2024年6月26日最終アクセス第2部 寄 稿1.COVID-19による感染者数と重症患者数の推移66後 藤 隆 久COVID-19パンデミック時の麻酔科の役割(病院長として)
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