日本麻酔科学会 70周年記念誌
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 パンデミック中の集中治療体制確保のために、麻酔科の果たせる役割は大きい。ICUでの重症患者診療、ラピッドレスポンスチーム、医療従事者教育など、麻酔科医の活躍の場は多いし、実際今回のCOVID-19パンデミック中にも多くの麻酔科医が活躍した。通常診療が圧縮され手術件数が減ったこともそれを後押ししたかもしれない。 次のパンデミックでも麻酔科医が引き続き活躍できるためには、いくつか条件がある。まずは麻酔科が平時から重症患者の診療に積極的に関与していることである。平時にやっていないことを緊急時に急にやろうとしてもうまくいかない。また、麻酔科の本来業務のタスクシェアリング、タスクシフトも重要である。手術件数が増える中、働き方改革により長時間労働を適正化するだけでなく、麻酔科の活躍範囲を広げることは生産的だ。このような平時の余裕のある働き方が、緊急時の医療現場の強靭さを引き出す原動力となる。 私の病院長経験からも、病院管理者がいかに麻酔科医を頼りにしているか、これを読者の皆様に是非お伝えしたい。次のパンデミックや災害に向けて、病院を強靭に、レジリエントにするためにも、麻酔科の活躍と叡智は欠かせない。私たちはその誇りを胸にもって行動しよう!文 献(URLは2024年6月27日最終アクセス)[1] Marani M, Katul GG, Pan WK, Parolari AJ. Intensity and frequency of extreme novel epidemics. Proc Natl Acad Sci U S A 2021 Aug 31; 118(35): e2105482118. doi: 10.1073/pnas.2105482118[2] 公表版 ICU国際比較 厚生労働省医政局 令和2年5月6日https://www.mhlw.go.jp/content/10 900000/000627782.pdf (2024年6月27日最終アクセス) 日本集中治療医学会は、この表内での比較についてはいわゆるICUだけでなくハイケア (HCU等と呼ばれる病床)を病床数に含めるのが妥当で、日本の値は13.5床が適切であるとの見解を表明している。(https://www.jsicm.org/ news/news200510.html)[3] https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-1240 4000-Hokenkyoku-Iryouka/0000179719.pdf 診 調組 入-2 29.10.5(平成29年度第9回)入院医療等の調査・評価分科会5.最後に—病院長の立場から麻酔科医へのメッセージ4.麻酔科医の役割68

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