る[9]。き方がしやすい環境整備」など9分野における具体的な方向性を示した「働き方改革実行計画」がまとめられた。2018年6月には「働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」が成立、2019年4月から施行されている。この法律には罰則もあり、違反した場合には労働者1人あたり6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金などが規定されている。ただし、法規違反があっても直ちに収監されるわけではなく、繰り返しの指導を無視した場合に初めて罰則が適用される[8]。「働き方改革」の実効性をあげるためには、労働における時間的制約の緩和や、フルタイム以外の労働に対する処遇改善、場所にとらわれないテレワークの導入などが必要である。全産業、全職種を対象とした「働き方改革」だが、運送業、建設業、医師については規制の適用が他業種よりも5年間遅れて開始された。これは、各業界団体からの要請と社会への影響を考慮したためであ 「令和元年 医師の勤務実態調査」によると、病院の常勤勤務医の約4割が「過労死ライン」と言われる月80時間以上の残業をしており、160時間を超える医師も約10%いた[10]。従前から病院常勤医師の長時間労働は常態化しており、過労死を含む労災事故が起こってもおかしくない状況と解釈された。長時間労働後の疲労蓄積や睡眠不足は、医療過誤の誘因となり、医師の健康を蝕むだけでなく、医療そのものの安全性確保にも障害となることから、医師の働き方改革は絶対必要と考えられている。2021年5月28日に、医師の働き方改革を進めるため、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」が公布され、「医師の働き方改革」は、『安心・安全な医療を提供するために、医師の長時間労働を是正して、医師の心身の健康を確保しようとする制度』とされた。 労働基準法により時間外労働は月45時間、年360時間まで(特別条項付きの36協定を締結している場合は、月100時間、年720時間まで)と定められている。この上限規制は医療機関においても医師以外の医療従事者には2019年4月1日(中小企業に該当する場合は2020年4月1日)から施行され、2024年4月1日からは医師にも適用されるようになった。しかし、上限規制を一律に設定すると大学病院をはじめとした一部の病院では医療サービスの維持が出来なくなる可能性が高いため、「A・B・C水準」という診療実態に応じた例外規定が設定されている。ほとんどの大学病院が申請した連携B水準では、自院のみでは年960時間以内だが、副業・兼業先での労働時間と通算して時間外労働の上限を年1,860時間としている。 2024年4月の施行に合わせて以下の項目が各医療機関で取り組まれた。・ 勤務する医師が長時間労働となる医療機関に おける医師労働時間短縮計画の作成・ 都道府県知事への、地域医療の確保や集中的な研修実施の観点からやむを得ず高い上限時間を適用する医療機関としての指定申請・ 当該医療機関における健康確保措置(面接指導、連続勤務時間制限、勤務間インターバル規制等)の実施 また、各医療機関はそれぞれ最も該当すると思われる水準に応じて、医師の勤務時間の把握と勤務環境の調整に継続的に取り組んでいる。 医師の労働時間の削減にためには、複数主治医制の導入、医療従事者や医師事務作業補助者など他スタッフへのタスク・シフティング、ICT機器の導入による効率化などが有効とされている。日本麻酔科学会は各医療機関の取り組みを支援するため、2024年時点で「周術期管理麻酔科医師不足<医師の労働時間の削減のためのタスクシフト・シェア><医師の働き方改革>75
元のページ ../index.html#83