日本麻酔科学会 70周年記念誌
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050多職種連携(人)2,500看護師薬剤師臨床工学技士2,0001,5001,0005002014201520162017(人)30252015102024(年)2020202120222023(年)201820192020202120222023図1 周術期管理チーム認定資格保有者数の推移薬剤師、臨床工学技士に信頼される周術期管理チームの教育体制を構築したことになる。 米国では「perioperative surgical home」という概念が2010年代より広まっている[2]。これは、患者を中心として、医師主導による多診療科多職種によるチーム医療により周術期を通して患者のケアを行うことと定義されている。そして、その目標は患者の予後改善と少ない医療費で優れた医療を提供することである。Perioperative surgical homeの推進には、高騰する医療費の割には手術成績が思わしくない施設があるなどの米国国内でのジレンマが関係していたようである。すなわち、日本国内の周術期管理チーム発足のきかっけがマンパワー不足だったのに対し、perioperative surgical homeの出発点は費用対効果の追求という面が大きかったと思われる。しかし、出発のきっかけは異なっていても、多診療科多職種が連携して安全に効率よく患者管理を行っていくという考え方はほぼ同じである。2)特定行為研修 厚生労働省は、団塊の世代が75歳以上になる2025年に向けてさらなる在宅医療の推進を図るために、医師または歯科医師の判断を待たずに手順書により一定の診療補助ができる看護師を養成するための特定行為に係る看護師の研修制度を2015年に開始した。厚生労働省はこの制度を開始したときに2025年までに10万人の特定行図2 日本麻酔科学会特定行為パッケージ(術中麻酔管理領域)研修修了者数の推移為研修修了者が生まれることを期待していたが、その思惑どおりに研修修了者が増えなかった。そこで、厚生労働省は特定行為研修のパッケージ化を考え、日本麻酔科学会は厚生労働省からの依頼を受けて術中麻酔管理領域のパッケージ化に協力し、2019年に特定行為研修のパッケージ化がスタートしている。それでも2024年3月時点で特定行為研修修了者は9,135人であり、目標の10万人に遠く及ばない状況である。 日本麻酔科学会でも2020年に「日本麻酔科学会特定行為パッケージ(術中麻酔管理領域)研修」を開始した。正しい知識を持った麻酔科専門医の指示により、十分な研修を受けた看護師が特定行為を実施することを実現するため、本学会が指定研修施設となり、本学会認定病院を協力施設とした体制下で研修を適切に実施し、より自立してケアを行える看護師を育成することを目指している。2023年度末の時点で28名が研修を修了している(図2)。 2021年9月30日付で厚生労働省医政局長から「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について」の通知が出された。その内容は、2024年4月から医師にも適用される時間外労働の上限規制に対処するためには、現行制度の下で実施可能な範囲において、医師の業務のうち、医師以外の医療関係2 タスク・シフト/シェアの推進79

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