日本麻酔科学会 70周年記念誌
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3巻頭言るよう引継ぐことが目的であった。 日本麻酔学会設立から70周年を迎えた。第71回学術集会では、70周年記念シンポジウム『日本麻酔(科)学会70年の反省とこれからの展望−学会の活動から』を開催した。この70年間の学会活動で、達成できたこと、成し遂げられなかったことを振返り、次の世代が大局的な視点で希望が持て 1950年2月に米国視察から帰国した草間良男(慶應予防医学)は、米国では麻酔専門医がいない病院など一つも無く、外科の発達は麻酔によると報告し、CF. Sams准将に医療団の派遣を依頼して、1950年7月の日米連合醫学教育者協議会の開催に至った。参加者が驚いたことは、麻酔は痛みを取り手術をやりやすくするためではなく、病態生理に関する知識が必要で、術者のためではなく患者のために行うとの考えであった。 日本麻酔学会が1954年に立ちあがり、麻酔科の標榜、麻酔科医増、学会の法人化などの形式が整えられてきた。奇しくも、特殊標榜科としての指導医制度は日本の専門医制度の先駆けとなり、麻酔科標榜医は医師免許取得後の唯一の2階建て国家資格となった。救急・集中治療、ペイン・緩和への関与、心臓血管、産科、小児への分化等、活躍の場は広がり、麻酔薬、麻酔器と周辺機器・装置、モニターの進歩により安全性は向上してきた。 しかし、70年を経た現在、学会の重要な役割である研究は低迷し、臨床研修制度では必修科から外された。また、かつては社会問題であった麻酔科医不足に対しても、現在の厚労省には麻酔科医増の政策は無い。医療政策の中心は、医師の地域偏在と医療費削減に向いている。 今回6名の先生方に、70年の経緯を踏まえてこれからの展望を語っていただいた。研究も臨床も人材が要である。将来の医学・医療を見据えた日本麻酔科学会の方向性、麻酔科医の将来像を描いた上で、麻酔科医としての志や研究の面白さを教えることは、公益社団法人日本麻酔科学会の役割である。本シンポジウムがその一端となり、患者のための麻酔の推進となれば幸いである。一般社団法人日本麻酔科医会連合・代表理事慶應義塾大学・名誉教授杏林大学医学部・客員教授公益社団法人日本麻酔科学会・理事長札幌医科大学医学部麻酔科学講座・教授記念シンポジウム第1部 武 田 純 三山 蔭 道 明武 田 純 三山 蔭 道 明巻頭言

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