日本麻酔科学会 70周年記念誌
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 本邦における麻酔科専門医制度は、1963年に日本で最初に導入されている。他学会に先駆けて開始した理由は、麻酔科が1960年に「特殊標榜科」として厚生省に認可されたことである。麻酔科を標榜することを認めるために、指導者の下での修練を要し、その指導者の育成のために麻酔専門医ではなく「麻酔指導医」が設けられた。 開始当初から、筆記試験、口頭試験、実地試験(受験者の勤務する施設での)の体制であったが、最初の指導医は当時の麻酔学会の重鎮が無試験で認定され、彼らが試験官となって初めての試験が行われた。それ以後、麻酔科の専門医(当初の指導医)認定試験は、筆記試験、口頭試験(後に実技試験も追加)、実地試験の構成で継続されている。 麻酔指導医の認定から始まった麻酔科専門医制度であるが、当初は指導医認定が主な役割で、日本麻酔学会会員であり麻酔科領域で診療と研究に4年従事し、厚生省の麻酔科標榜の認可をうけていれば、5年目に受験可能であった。その後、制度の検討が順次行われ、指導医更新審鹿児島大学医学部麻酔・蘇生学講座名誉教授査も開始されることとなった。 2000年には、標榜医を麻酔科学会認定医とし、従来の麻酔指導医を麻酔科専門医、そして新たに麻酔科指導医を加えた3段階の専門医制度が発足した。専門医試験の受験資格も、麻酔科認定医取得後2年と変更された。新たな麻酔科指導医の認定は、専門医取得後5年間に所定の指導実績(専門医取得以前の麻酔科医ののべ指導人数等)に基づき行われた。 また、麻酔科標榜申請のために麻酔修練を行う施設は、当初は麻酔指導医が麻酔科責任者の施設としていたが、その後認定基準を定め、基準を満たした施設を麻酔指導病院と認定していた。2000年からは、症例数等、より詳細な基準を設けて審査を行なっている。 学会の認定制度の三段階制への改定に対応するため、2003年にそれぞれの資格に必要な基本知識と技術を整理し、初めての教育ガイドラインを作成した。教育ガイドラインは、学習ガイドライン、基本手技ガイドライン、薬物ガイドラインから構成され、研修医(のちの専攻医)と指導医がそれぞれに習得・維持すべき目標を段階ごとに示した。そして各項目は、大項目、中項目、小項目に細分され、学ぶべき内容が明示されている。麻酔科専門医試験のための指針ともなっており、その後、麻酔科学の知識の進歩、第2部 寄 稿教 育◯ 麻酔科専門医制度の発足◯ 麻酔科専門医制度の変遷82上 村 裕 一専門医制度と専門医試験の変遷

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