日本麻酔科学会 70周年記念誌
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医療技術の革新に対応して改訂され、2022年に第4版が発行されている。 2014年に発足した日本専門医機構は、それまでの学会主体の専門医制度を、国民から信頼される知識・技術面で優れた医師を育成し、質の高い専門医を認定する制度にするために設立された。そのため各領域(診療科)に共通の教育体制、認定制度が求められ、あらかじめ定められたプログラムに従い研修を行うプログラム制度が基本とされた。 機構から示されたプログラム整備指針に則り、麻酔科領域でも麻酔科学会が整備基準とモデルプログラムを作成することを求められ、2017年開始に向けて準備が進められた。それまでの学会の専門医認定では、4年間、麻酔科学会員として麻酔科領域で専従し、麻酔科認定医(麻酔科標榜医取得時に学会が認定)取得後2年経過すること、そして学会、論文での発表が専門医試験受験資格として求められていた。新たな機構の専門医制度では、4年間のプログラムを修了し、機構が各領域に求める共通講習を受講し、そして整備基準に定められた症例を経験することが専門医受験資格と変更された。 麻酔科学会では、専門医機構の新たな専門医制度に向けて、2013年から認定制度抜本的見直し専門部会を教育委員会に設置して検討を始めた。特にプログラム修了の要件となる麻酔症例数については、特殊麻酔として症例数が定められる産科麻酔、小児麻酔、心臓麻酔についてワーキンググループを設けて、予想される専攻医数と全国のそれぞれの麻酔症例数から妥当な必要症例数が決定された。2014年からは専門医研修プログラム検討ワーキンググループが研修プログラム整備基準とモデルプログラムの作成を開始し、認定制度抜本的見直し専門部会が決定した、600例以上の麻酔科管理症例(局所麻酔を含む)と、特殊症例[小児 (6歳未満)の麻酔 25症例、帝王切開術の麻酔 10症例、心臓血管外科の麻酔25症例(胸部大動脈手術を含む)、胸部外科手術の麻酔 25症例、脳神経外科手術の麻酔 25症例]を必要症例数とする研修プログラム整備基準を作成し、2016年には機構の承認を受けた。機構による専門医制度の発足は1年遅れ2018年からになることが決定したが、麻酔科学会は既に準備が完了していたため、2017年の学会認定制度を完成していた機構のプログラム制に変更し、他領域に先駆けて1年早く開始した。 機構による新専門医制度が2018年に開始された後は、それまでの学会認定の専門医の更新も機構の基準に則った審査を行い、機構専門医への移行が行われている。機構専門医の新規申請・更新に必要とされる共通講習、領域講習の学術集会での開催とe-learningでの受講体制を整備した。また、更新の際には実際に麻酔科医として勤務していることが前提条件とされたが、他学会と厚生労働省等から施設に所属しない麻酔科医が増加していることを指摘され、それを受けて機構専門医の更新の条件として単一施設での週3日の勤務が加わった。 本邦初の専門医試験として、第1回麻酔指導医認定試験が1963年に行われてから、試験会場(東京)での筆記試験、口頭試験と、その合格者の勤務施設での実地試験の形式で40年近く専門医試験が行われた。試験委員長は、その前年の学術集会の会長が務め、問題も会長が責任者となって作成されていた。2003年からは教育委員会の委員長が試験委員長を兼ねる体制となった。2002年からは受験者の増加と試験形態の変化に対応するために、試験会場が神戸のポートピアホテルとなり、2012年からは、筆記試験が別日程となって東京と神戸の2会場で開催されている。 試験の形態としては、平成になり口頭試験の教 育◯ 日本専門医機構による専門医制度◯ 専門医試験の変遷83

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