日本麻酔科学会 70周年記念誌
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留意してもらいたいことは4年目に試験が不合格でも5年目に試験を受けて合格すれば最短の6年目の4月1日から専門医となれるので、2回チャンスがあることを知っていただきたい。 2023年度から筆記試験はPC受験となった。それまでは東京・神戸の2会場に集合して試験を実施していたが、PC受験ではほぼすべての都道府県内に会場があり地方在住の受験者にとってはありがたい状況となった。試験は現在、一般問題と症例問題の2区分を実施している。日本麻酔科学会教育ガイドラインに沿って出題されている。また、筆記試験はミラーの教科書に記述されている内容、あるいは日本麻酔科学会から公表されているガイドライン、プラクティカルガイドの内容等から出題されている。近年の合格率は90%前後である。 口頭試験は2021年度に機構専門プログラム4年目と学会専門医プログラム5年目の2学年が同時受験となり、1つの部屋で1つの症例についてのみ試問されることとなったが、2022年度からは、それ以前の一人の受験生は2つの部屋を回り2つの症例について試問されるように戻っている。最近は、国民に対して日本麻酔科学会の専門医としてふさわしい人物か?自分の家族の麻酔を担当してもらってもいい人物か?という観点で、問題を作成している。単にいろいろな知識を知っているだけではなく、患者が危機的状況になった時にリカバリーする能力があるか?コマンダーとして外科医やコメディカルや同僚の麻酔科医に適切な指示が出せるか?ということを評価する方針になっている。また、麻酔科指導医のはじまりは標榜医の指導から始まっているので、後輩たちに適切に指導できるか?また、外科医・コメディカルたちと良好なディスカッションができるかなどコミュニケーション能力も評価している。私が受験したころは返答に困ったら助け舟を出してくれた試験官もいたが、それでは受験室間のバイアスが生じてしまう。近年ではこれは質問する、しないなど詳細に問題作成委員会が決定し、試験官マニュアルに記載されているので、試験室間のバイアスも極力小さくなるように努力している。日々の症例をきめ細かく考えて実践し、予期せぬ非常事態に陥った時にどの様に対応するか常に考えて症例に臨んでいないと口頭試験での合格は難しいものになる。 実技試験に関しては、コロナの時から中断して評価表方式にしている。この背景に2つのことが関連している。一つは実技試験は受験生の手元を見たり、気管支ファイバーの補助など試験官と受験生が密になるために中断した。2つ目は、実技試験を実施していたころは、麻酔器やシミュレーターや挿管デバイス、カテーテル類、エコーなど業者から提供・貸与があったが、近年それが企業のコンプライアンスの観点で、厳しくなり困難になっているという側面もあり、コロナ解除後の現在も評価表となっている。今後の課題は後述する。評価表はいくつかの項目についてどれくらいできるのかプログラム責任者が受験生毎に評価して日本麻酔科学会に提出することになっている。 2024年度から機構専門医から機構専門医の更新が開始される。これまでの学会専門医からの更新に比べて必要単位数等更新基準が厳しくなっている。これは、日本専門医機構が各診療科に対してある程度一定の基準を示していて、それを遵守すると以前より厳しくなったというのが現実である。必要な書類は職務・麻酔経歴、必要診療実績、必要単位数等の書類が必要である。2024年度から新たに在籍証明書の提出を求めることにした。これは機構専門医の更新年度に在籍する施設が発行時点で単一施設週3日以上の在籍を証明する書類である。証明の期間は2024年度では8月1日から10月31日までとなっている教 育〇専門医試験の現状〇専門医更新の現状87

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