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新しい専門医制度への取り組みについて 2016年06月27日

【2016年06月27日】

 新しい専門医制度への取り組みについて 

公益社団法人日本麻酔科学会 
理事長 外 須美夫


 2017 年度から予定されていた日本専門医機構が認定する新専門医制度の全面実施が今般見送られることになりました。
現行通りの学会独自の方法で専門医養成に取り組むのか、それとも専門医機構主導で準備した専門医研修プログラムを用いて行うのかの判断は、学会に委ねられることになりました。
 本学会は学会設立以来、学会独自に専門医制度の改革を進めてきました。1963年に開始した麻酔指導医制度はわが国の専門医制度の先駆けとなるものでした。
 また1999年に認定制度改訂を行い、診療実績等の基準を定め、認定医、専門医、指導医それぞれの資格要件を明確化してきました。2011年には公益社団法人となり、社会的要請や質の高い麻酔を担保するために専門医制度の抜本的な見直しに取りかかりました。機を同じくして、厚生労働省が「専門医の在り方に関する検討会」を立ち上げ、国民の視点に立った中立的な第三者機関(現日本専門医機構)を設置し,専門医の認定と養成プログラムの評価・認定を統一的に行うことを検討し始めたことから、本学会も基本18診療科の一つとして専門医制度整備指針を参考に見直しを行い、新しい制度をすでに2015年4月1日より施行しています。
 今回は日本専門医機構の意思決定プロセスや地域医療への影響が問題視されました。私たちも定員数や施設要件、専門研修指導医要件など機構からの画一的な条件設定に対して地域医療への配慮から意見を出して協議を行ってきたところです。
 本学会は、今回の全面実施見送りを受けて、2017年度の麻酔科専門医養成を以下のように行う方針と致します。

1)2015年4月から開始している本学会の現専門医制度を2017年度以降も引き継ぐ
2)専門研修プログラムは1次審査に提出したプログラムを応用する
3)専攻医登録は専門医機構のWebサイトを利用せず、従来通り各プログラムごとに専攻医募集を行い、名簿を本学会へ報告する
  ※日程の詳細は学会HPで公開する
4)地域医療への影響を考慮して専門研修プログラムの定員枠や施設要件および専門研修指導医要件は柔軟に運用する
5)大学病院や基幹病院だけではなく地域の中小規模の研修連携施設においても一定の研修が実施され、麻酔医療の量的質的偏在が少しでも解消されるように努める
6)麻酔科専門医更新については、2018年度までは現制度での更新とし、2019年度から順次日本専門医機構更新基準で行うという計画に現時点で変更はない
7)専門医更新のための講習、実績等についてはすでに取得した単位は維持され、今後の講習計画等も継続して行う

 日本専門医機構は早晩新しい執行部体制になります。2018年度以降の制度設計に対する抜本的見直しやこれまで準備したプラットフォームの変更もあり得る状況です。それに応じて、本学会の専門医制度への取り組み内容も変更を迫られる可能性があります。しかし、麻酔科専門医制度のめざす方向は、麻酔科医としての実力と責任感と倫理観と良心をもち、麻酔のprofessionalismを生涯にわたって発揮できる専門医を世に送り出し、地域医療に幅広く貢献することであるという原点を忘れずに、今後も専門医制度を実りあるものにしていく所存です。