2040年問題に関する厚生労働省への要望書 2024年10月29日
2040年問題に関する厚生労働省への要望書
公益社団法人日本麻酔科学会
理事長 山蔭 道明
理事長 山蔭 道明
厚生労働省医政局に2024年10月25日に訪問し、直接要望書を提出いたしました。
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2024年8月30日
厚生労働省
医政局長 森光 敬子 殿
公益社団法人日本麻酔科学会
理事長 山蔭 道明
理事長 山蔭 道明
要 望 書
いつも日本麻酔科学会の活動にご理解,ご指導いただき,感謝申し上げます。
この度,急激な少子高齢化ならびに人口減に伴ういわゆる2040年問題に関して,我々麻酔科医が主に勤務する急性期病院のさらなる集約化の推進について要望させていただきます。
日本麻酔科学会は2024年に創設70周年を迎えました。欧米に遅れた麻酔科診療を充実させるため,厚労省が主導した標榜医制度,そして弊会が果たしてきた役割は大きいと考えています。弊会では,標榜医制度の発足に合わせた指導医(現在の専門医に相当)制度の発足,教育委員会による専門医制度の構築・教育ガイドラインの発表,学術委員会による学術集会の開催・機関誌の発刊,安全委員会による各種ガイドラインの発表など,弊会は会員の教育と麻酔管理技術の向上、学術面での底上げに貢献してきました。その結果,学会員数・専門医数は順調に伸びてきており,本邦の多くの周術期麻酔科診療に麻酔科専門医が従事するようになりました。ただし,全周術期麻酔科診療に麻酔科専門医を従事させるには専門医数が不足しております。
一方,麻酔科医の増加に伴い,その周辺領域,例えば救急医療,集中治療,ペインクリニック,緩和医療,無痛分娩対応,そして病院管理業務など,本来の周術期麻酔科診療以外での活躍の場が広がってきています。また,麻酔科は他診療科と比べ多様なライフスタイルへの対応を迫られることが多く,一部の麻酔科医に当直や夜間/休日緊急手術対応など負荷がかかっております。
2024年度から,医療現場でも働き方改革が法的に導入され,多職種医療者へのタスク・シフト/シェアが推進されています。国民の周術期医療の安全性を担保しながら,麻酔科医の労働環境を改善することも重要な課題となっています。一方、本邦の超少子高齢化は深刻で、コロナ禍によりこの傾向が助長されることが危惧されます 。総務省の報告では,2040年に日本の人口はピーク時より2000万人以上が減少し,高齢化率は35%以上,そして日本の50%の居住地域で人口が40%以上減少することが示されています。ヒューマンリソースが相対的に減少する中、増加する医療ニーズに対応するためには本邦の特徴でもある小規模の外科診療を縮小し,いわゆる急性期病院の集約化・再編を進めることが喫緊の課題であると感じております。急性期病院の集約化は麻酔科医師のマンパワーを効率的に最大限に活用するためにも極めて重要であると考えます。一方で集約化に伴い,起こりうる地域における医療アクセスも課題であり集約化と均てん化はバランスを持って進めることも重要と考えます。
この点において,行政が主導権をもって,将来を見据えた急性期病院の方向性を示していただけますようお願いいたします。