よくある術前合併症

脳卒中の既往

脳卒中

脳卒中とは、脳の血管が破れたり(脳出血、くも膜下出血)、詰まったり(脳梗塞)することによって、脳が障害を受ける病気です。 障害を受ける脳の部位や範囲によって、運動や言葉の機能が失われるなど、さまざまな症状がおこります。後遺症を残さない軽度のものから、死に至る重度のものもあります。

脳卒中になったことがある方が全身麻酔を受けることになった場合

脳卒中再発のリスクが高くなります

過去に行われた調査では、脳卒中の一種である脳梗塞になったことのある患者さんが全身麻酔で手術を受けた場合、 脳梗塞になったことのない人よりも脳梗塞を発症するリスクが高くなることが報告されています。

他の合併症をおこすリスクも高くなります

高齢、喫煙、肥満、糖尿病、高脂血症、不整脈(心房細動)、高血圧などは脳卒中の危険因子ですが、これらは他の病気の危険因子でもあります。 また脳卒中をおこした後に運動機能が落ちている患者さんでは、全身麻酔後に呼吸器合併症や肺塞栓などの合併症をおこすリスクも高くなります。

脳卒中の危険因子をお持ちの場合、できる限り治療後に手術に臨んでください

脳卒中の再発予防として、高血圧・高脂血症・糖尿病・不整脈・動脈硬化など、危険因子を治療しておくことが有効であるとされています。

脳卒中の再発を避けるため、麻酔科医は厳重な麻酔管理を行います

麻酔科医は手術中、脳卒中の再発を防ぎ、再発しても早期の治療が可能になるよう、さまざまなモニターを用いて、患者さんの全身状態を継続的に観察しています。 また再発を防ぐために、血圧の大きな変動を避ける、脳内の圧力変化を少なくする、血液が濃くならないように脱水を防ぐなど、厳重な管理を行います。

少しでも脳卒中に心当たりがあったら麻酔科医にお伝えください

脳卒中には一次的に症状をおこしすぐ消えてしまうもの(一過性脳虚血発作)があります。 一過性脳虚血発作は、より重症な脳卒中の前触れになる場合が多く、全身麻酔前には精密な検査と対策が必要になります。
また、前述のように脳卒中をおこしたことがある方が全身麻酔を受ける場合、脳卒中の再発リスクは高くなります。 「今は症状が無い・軽いから、伝えなくてもいい」と思わず、少しでも心当たりがあれば、手術前に担当麻酔科医にお伝えください。