よくある術前合併症

不整脈と全身麻酔

不整脈

心臓は規則正しく収縮と拡張を繰り返し、全身に血液を送り出すポンプの働きをしています。 この収縮と拡張は、刺激伝導系という心臓の筋肉(心筋)の中を通る電気回路を電気信号が通り、 心筋を興奮させることでおこります。通常は、この電気信号が規則正しいリズムでおこり、収縮-拡張も規則正しく繰り返されます。 不整脈は、この刺激伝導系に何かしらの異常がおこることで発生します。リズムが不規則になったり、 速くなったり、遅くなってしまったりすることを不整脈と呼びます。

*刺激伝導系(図の赤い線)
電気刺激は心房にある洞結節という所から始まり、刺激伝導系を伝わり、まず心房を収縮させます。 その後、心室に刺激が伝わり、心室が収縮します。不整脈がおこるとこの規則的な心臓の収縮が妨げられてしまいます。

不整脈のある人には、不整脈をおこす原因疾患のある方もいれば、健康な人の中にも、疲労やストレスで不整脈がおこってしまう場合もあります。

不整脈の症状

自覚症状のない方もいますが、動悸、めまい、重症の場合には失神をおこす方もいます。 普段からこのような症状や脈の乱れを感じる場合は、手術前の診察時に医師にご相談ください。

注意が必要な不整脈

不整脈のある患者さん全てが手術・全身麻酔を受けられないという訳ではありません。
手術前の麻酔の診察では、不整脈がおきる原因疾患があるのか、またその不整脈が手術や全身麻酔を受ける時にどのような合併症をおこす可能性があるかを 把握することが大切になります。不整脈にはさまざまな種類がありますが、ここでは特に注意が必要な不整脈について簡単に説明します。
  • 洞不全症候群、房室ブロック
    洞不全症候群は、電気信号の発生頻度が少なくなることでおこります。房室ブロックは、心房と心室の境にある房室結節の機能が低下し、 心房から心室へと電気信号が伝わりにくくなったことでおこります。いずれも徐脈(脈が1分間に50回以下となるもの)となります。 麻酔薬は刺激伝導系の伝導を抑制する作用があり、重症の場合は術前にペースメーカーの留置を検討する場合があります。
  • Brugada症候群
    特徴的な心電図(Brugada心電図)を示し、致死的な不整脈をおこします。無症状の方が多いですが、過去にBrugada心電図を指摘されたり、 失神の既往がある方、また血縁者にすでにBrugada症候群や突然死をされた方がいる場合は、手術前に専門医の診察が必要となることがあります。
上記以外にも、心房細動や期外収縮などさまざまな種類の不整脈があり、麻酔に影響を与える場合があります。 過去に何かしらの不整脈を指摘されたことがある方は、その旨を担当麻酔科医にお知らせください。