よくある術前合併症

腎機能障害・血液透析中の患者さんと麻酔

急性腎障害と慢性腎臓病について

急性腎障害とは、僅かの期間で腎臓の機能が低下する状態を指します。尿が出なくなり、体の水分やミネラルの調節ができなくなります。
高齢者や慢性腎臓病の患者さんは急性腎障害になりやすく、血液透析などの治療を必要とする場合もあります。
慢性腎臓病とは、数か月間以上にわたって腎臓の機能が低下している状態を指します。腎臓で尿を濾過する機能が低下するため、 体に必要なたんぱく質などが尿から漏れてしまったり、反対に不要な老廃物が尿から出せなくなったりします。
日本では成人の8人に1人(高齢者では2~3人に1人)は慢性腎臓病と言われています。
慢性腎臓病が進行すると、体内の水分量やミネラルを調節し、老廃物を除去するために透析治療が必要となる場合もあります。
慢性腎臓病は、糖尿病、高血圧、喫煙、高尿酸血症などのいわゆる生活習慣病と関連しており、生活習慣の改善が重要です。
また薬剤投与による腎障害を薬剤性腎障害と呼び、急性腎障害や慢性腎機能低下に移行することがあります。

慢性腎臓病と麻酔

慢性腎臓病は、手術前の検査で初めて指摘されることもあり、その場合、未治療の生活習慣病や合併症を調べる必要があります。
慢性腎臓病患者さんの手術では、手術のストレス、手術中に使用するお薬などさまざまな要因によって、手術後に急性腎障害におちいる可能性があります。
また腎臓の機能が低下した患者さんでは、麻酔・手術後に心筋梗塞などの循環器系の合併症のリスクが高くなると報告されています。
手術前の検査で慢性腎臓病が指摘された場合には、麻酔科医、内科医にご相談ください。

血液透析と麻酔

血液透析中の患者さんの手術の場合、麻酔や手術の影響で普段よりも多くの水分が体内に溜まってしまったり、ミネラルのバランスが崩れやすくなります。 そのため、基本的には手術前日に透析していただき、手術の次の日にも透析を受けていただくことになります。
患者さんの状態、手術の術式、手術中の経過によっては、手術終了直後から透析が必要となる場合があります。
麻酔法に関しては、全身麻酔、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔、神経ブロックなどがあり、腎機能を維持するために患者さんの状態に応じて最適な方法を選択します。 手術中、シャントを保護することも重要ですので、どちらの腕にあるかお教えください。
わからないことがありましたら、麻酔科医にご相談ください。