よくある術前合併症

甲状腺機能異常と全身麻酔

全身麻酔を受ける際に、甲状腺の病気をお持ちの方の注意点について説明します。

甲状腺ホルモン

  • 甲状腺は脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)の刺激により、 甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニン(T3)やサイロキシン(T4))を合成し、保存する臓器です。
  • 甲状腺ホルモンは甲状腺から全身の臓器に運ばれて、体の新陳代謝を盛んにしたり、成長を促進したりする役割を持っています。

甲状腺機能に関する病気

甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモンが通常より多く分泌される病気です。症状としてはのど(甲状腺)が腫れたりしこりを触れる、ドキドキと脈が速くなる、 手の指が震える、汗をかきやすくなる、たくさん食べるのにやせる、イライラする、疲れやすい、ときどき手足の力が入らなくなるなどがあります。 甲状腺機能亢進症と診断されていない、診断されているが治療を受けていない、もしくは、甲状腺ホルモンの値が薬物などで適切にコントロールされていない 時に手術を受けると、甲状腺機能亢進症状が急激に悪化することがあり、この状態を「甲状腺クリーゼ」といいます。 異常な高熱、不整脈、意識消失などを引きおこし、死に至る危険もあります。

※甲状腺機能亢進症と診断されている、あるいは治療を受けている方へ
  • 手術前に必ず麻酔科医にご病気をお持ちのことをお伝えください。
  • 問診では、内服薬や現在の甲状腺機能について伺います。診察では、心拍数の増加、不整脈、発汗などの 甲状腺機能亢進症状の有無の確認を行います。また甲状腺ホルモンの検査を行うこともあります。
  • 甲状腺機能亢進症の治療が不十分である場合、手術中や手術後に甲状腺クリーゼを発症する可能性があります。 一方、手術前に甲状腺機能をコントロールすることにより、甲状腺クリーゼ発症の可能性を非常に低くできます。 甲状腺クリーゼの発症は命に関わるため、甲状腺機能の治療を優先するために手術の延期が必要となる場合があります。

甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンの分泌が不足する病気です。甲状腺機能低下症の患者さんが全身麻酔を受けた場合、 体温が下がったり麻酔からの覚醒に通常よりも時間がかかったり、 手術後に呼吸不全がおこる可能性があります。 また、重症の甲状腺機能低下症の患者さんでは、手術中や手術後に意識障害や心不全などの重篤な合併症がおこることがあります。 ただし、ホルモン分泌量が正常範囲内の甲状腺機能低下症(TSHのみが上昇しているが、特有の症状はない)では、 手術や麻酔における問題点はほとんどないとされています。

※甲状腺機能低下症と診断されている、あるいは治療を受けている方へ
  • 手術前に必ず麻酔科医にご病気をお持ちのことをお伝えください。
  • 問診では、内服薬や現在の甲状腺機能について伺います。 診察では、疲労感、むくみなどの甲状腺機能低下症状や心不全症状の有無の確認を行います。 また甲状腺ホルモンの検査を行うこともあります。
  • 甲状腺機能低下が著しい場合は、甲状腺機能の治療を優先するために手術の延期が必要となる場合があります。