よくある術前合併症

妊娠中の非産科手術

妊娠中に全身麻酔を行なっても大丈夫ですか?

妊娠中であっても、必要な手術は時期を考慮して行われます。
妊娠中の全身麻酔では、①麻酔薬の影響で胎児に奇形が生じたりしないか、②流産や早産の原因にならないかを心配されると思います。

麻酔薬により胎児に奇形が生じるか?

妊娠中にお母さんに投与されたお薬は、胎盤を介して胎児にも移行します。 動物を使った研究では、非常に大量の麻酔薬を投与すると催奇形性があるという結果が報告されています。 しかし、通常量の麻酔薬を使用したヒトの研究では、胎児の催奇形性を明確に証明するものはありません。 全身麻酔を行なっても、奇形の頻度を増加させるとは言えないのです。 しかしながら、手術を待機できる場合には、胎児の体の基礎が作られる器官形成期である妊娠4〜10週を過ぎてから手術を行います。
また局所麻酔薬は胎児へほとんど移行しないため、背中の神経の近くに局所麻酔薬を投与する脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔では、胎児への影響はまずありません。 脊髄くも膜下麻酔により手術が可能な場合には、こちらを選択することがあります。

手術や麻酔が流産や早産の原因になるか?

妊娠初期の手術が自然流産の頻度をやや増加させ、妊娠後期では早産の頻度をやや増加させるという報告があります。 そのため、手術を待機できる場合には、流早産の危険性が少なく、母体の解剖学・生理学的変化が比較的少ない妊娠14週〜28週に行います。