ステロイド薬の術前管理
ステロイドのはたらき
ステロイドには炎症を抑える働きがあり、アレルギー疾患やリウマチなど膠原病の患者さんに投与されることが多いお薬です。
実は、私たちの体も副腎という臓器から生理的にステロイドを分泌しています。
このステロイドは、血圧や血糖値をちょうどよい値に調節する働きがあり、体調を整えるために非常に大事な役割を担っています。
手術前の管理
ステロイドを投与中の患者さんが手術を受ける際は、持病が安定したまま過ごすことができるようにステロイドの投与を続けます。
場合によっては、ステロイドを追加で補充して手術に臨む場合もあります。これをステロイドカバーと呼びます。
ステロイドの投与量が多い患者さんや、長期的に投与中の患者さんでは本人の副腎からのステロイドの分泌力が低下している可能性があります。
このため、手術という非日常的な環境のもとで、大きな体的ストレスを受けた場合、血圧や血糖値をうまく調整できずに体調を崩す恐れがあり、
ステロイドを補充する必要があります。
麻酔科医は、外科系医師やステロイドに詳しい内科医と連携しながら、ステロイドカバーの必要性について検討します。
副作用
ステロイドの投与は持病を安定させるためにとても重要ですが、手術に際してはいくつかの問題があります。
キズが治りにくいこと、傷口が感染しやすいことなどが知られています。
このため、ステロイドの投与量が非常に多い患者さんでは、手術前に時間をかけて投与量を減らしたのちに手術に臨む場合もあります。
外科系医師を中心とした手術チームはステロイドの副作用をよく理解していますので、十分に注意しながら手術および手術後の診療を行います。
くわえて、患者さん自身にも手術チームの一員としてこれらのことをよく理解したうえで、ご協力していただくことが非常に重要です。
ステロイドを服用している患者さんへ
手術に際して少しでも不安があれば、疑問を抱え込まずに麻酔科医に相談してください。安全で安心な手術となるように全力でサポートします。