よくある術前合併症

肺気腫と全身麻酔

肺気腫

肺気腫とは、喫煙などの生活習慣や生まれつきなどの要因によって肺の構造が徐々に壊れ、 肺からの酸素の取り込みや二酸化炭素を吐き出す能力が低下する病気です。 特に進行すると、しだいに息が「吐きにくく」なる喘息に似た症状が出るのが特徴です。 また痰が多くなるため、さらに呼吸がしづらくなったり、肺炎になりやすくなったりします。
これまで肺気腫と診断されておらず、自覚症状がなくても、手術前の呼吸機能検査で肺気腫を指摘されることもあります。

全身麻酔に伴うリスク

全身麻酔中には人工呼吸を行います。人工呼吸中は痰を自分で排出できないため気管支に詰まりやすくなります。 肺気腫の方や喫煙者はもともと痰が多いためさらに詰まりやすくなります。 痰が詰まると、そこから先の肺がつぶれて呼吸を障害したり、肺炎を引きおこしたりします。
ただし、これらの合併症のリスクは肺気腫の程度や、手術の種類・時間などにより影響を受けるため、 手術を受ける際には担当の麻酔科医に遠慮なくご相談ください。

手術のリスクを減らすには

手術前に肺の構造を正常に戻すことはできませんが、手術前の生活習慣の改善により肺の機能低下を防ぎ、肺合併症の危険を減らすことができます。 以下に手術前の準備を挙げておきます。
  • 手術前に風邪をひかないように体調管理を行います。
  • タバコを吸っている方はやめましょう。手術の1か月前から吸わないようにしてください。
  • 普段運動をあまりしない人は、散歩や軽い運動をしましょう。 運動により呼吸(する筋肉)を鍛えることで、手術・麻酔による呼吸機能の低下を防ぎ、痰も排出しやすくなります。 腹式呼吸などの呼吸トレーニングも効果があります。
  • 主治医がいれば相談しましょう。外科医が紹介してくれる場合もあります。 手術に向けて、内服薬や吸入薬などの追加・調整をして手術に臨むことで、合併症を減らすことができます。