よくある術前合併症

抗血小板薬・抗凝固薬の術前管理

抗血小板薬・抗凝固薬

いずれのお薬も血栓(血液のかたまり)による病気を予防するお薬です。 プラーク(コレステロールなどの原因でできる血管内のコブ)が剥がれてできる血栓の予防には「抗血小板薬」が用いられ、 血液の流れの滞りでできる血栓の予防には「抗凝固薬」が用いられます。抗血小板薬の代表的なお薬にアスピリンがあり、 心筋梗塞や狭心症、脳梗塞の後の患者さん、足の動脈が狭くなっている末梢動脈疾患の患者さんなどに用いられます。 抗凝固薬の代表的なお薬にはワルファリンやエドキサバンなどがあり、心房細動という不整脈がある患者さん、 心臓の手術をして機械弁が入っている患者さんや全身性の血栓の予防などに用いられます。

抗血小板薬・抗凝固薬の利点と欠点

これらのお薬の利点は血栓によっておきる病気を予防できることです。 一方で、本来の血液が固まる機能を抑えるため、出血しやすい欠点があります。 手術に際しては、抗血小板薬や抗凝固薬を内服していると、手術中の出血量がより多くなる危険性があるため注意が必要です。 そのため手術前には、お薬を飲むことの利点と欠点を天秤にかけ、お薬を飲み続けるか、全て中止するか、種類や数を減らすかを検討する必要があります。
手術前の外来受診時には、現在飲まれているお薬(高血圧や糖尿病のお薬)と同じように、抗血小板薬・抗凝固薬を服用していることを医師、看護師、薬剤師にお伝えください。

麻酔方法の選択への影響

麻酔の方法には点滴や麻酔ガスでおこなう全身麻酔のほかに、神経の近くに注射をして痛みを取る区域麻酔(局所麻酔)があります。 抗血小板薬や抗凝固薬を飲んでいると、注射に伴う出血により神経を痛める危険性があるため区域麻酔が行えないことがあります。 ただし、抗血小板薬や抗凝固薬ごとに定めている適切な休薬期間を守ることで安全に行える区域麻酔や、 内服しているお薬の種類によっては区域麻酔ができる場合があります。お薬を休薬できない場合には、 区域麻酔とは別の方法で手術中や手術後の痛みを取り除くことができますのでご安心ください。