よくある術前合併症

新型コロナウイルス感染後

感染後の麻酔のリスクは?

新型コロナウイルス感染症は2019年末から全世界に広がり、変異株の出現と流行の波を繰り返しています。 このような中で、新型コロナウイルス感染後、あるいは感染中の患者さんの手術も日々行われています。
新型コロナウイルスに感染すると、咳や発熱、重症肺炎といった呼吸器系の症状から、腎臓や心臓の障害など重篤な状態となる方が多数報告されており、 この様な状態で麻酔・手術を受けることは決して安全ではありません。 2021年に行われた調査では、新型コロナウイルス感染後、6週間以内に麻酔、手術を受けた場合、死亡率が通常より高くなり、 手術後の肺炎や呼吸窮迫症候群などの肺の病気も増えることがわかりました。つまり、新型コロナウイルス感染後は、 できるだけ手術の時期をずらした方がよいということです。
ただし、新型コロナウイルス感染は無症状から重症まで症状はさまざまであり、患者さんがもともとかかっていた病気(持病や新型コロナウイルス以外の感染症など)や、 受ける手術の種類もさまざまであるため、すべての手術でリスクが高いということではありません。
また、緊急性の高い手術では、感染後の期間を空けるよりも手術を優先させた方がよい場合があります。

感染後はどのくらい時間を空ければよい?

日本麻酔科学会では2021年に英国から示された提言を踏まえて、新型コロナウイルス感染後の手術の時期についての目安を次のように示しています。
まず、新型コロナウイルス感染時の重症度、症状が続いているかどうか、感染前後の持病や他の感染症などの重症度や全身の状態、手術する病気の進行や緊急性、 手術の複雑さや体に及ぼす影響を総合的に評価します。
そして、感染時の重症度が、軽症~中等症の場合は発症後10日間、重症であった場合は15~20日間空けることを推奨しています。
また、待機可能な手術であれば、感染後から7週以降に予定すること、さらにその時点で症状が続いている場合には、手術の時期とリスクを慎重に考慮することを推奨しています。

新型コロナウイルスに感性した後に麻酔を受ける時

上記のような判断はあくまで目安であり、患者さん一人一人で状況は違います。 また今後の感染状況の変化や時間を置いた調査では、これらの目安も変わる可能性があります。
これから麻酔、手術を受ける患者さんには、主治医や麻酔科医とよく相談し、意思決定されることをおすすめします。