よくある術前合併症

心不全

心不全とは、「心臓の動きが悪いために、息切れやむくみがおこり、年月を経てだんだん悪化し、生命を縮める病気」です。 心臓は安静時には一回の拍動で約70mlの血液を拍出し、運動時には約120mlまで増加します。 心不全の患者さんでは心臓の収縮が悪いために拍出量が減少し、体へ届く血液量が不十分となったり、心臓に戻る直前の血液が渋滞したりします。 その結果、ちょっとした運動でもすぐに疲れてしまったり、下肢や肺に水がたまってむくんだり、息が苦しくなったりします。 循環器内科で、心臓の動きを調節するお薬や、体の水分量を調整するお薬などを用いて管理します。

心不全をお持ちの方の麻酔リスク

多くの麻酔薬は痛みに対する反応や意識を低下させるのに並行して、心臓の動きも弱くしていきます。 麻酔前から動きの悪い心臓の機能が麻酔後にさらに低下し、症状が悪化するリスクがあります。

手術前の準備

内科での薬物治療や生活改善を通して、できるだけ心臓の調子がよい状態を維持し、調子のよいときに手術を実施するように計画します。 心臓の調子が悪いときや不安定なときは、手術を延期して内科の治療を優先します。内服薬は重要なものが多いので、 手術前後の服薬の継続・中止に関しては医師の指示を必ず守ってください。

手術後の注意点

全身へ送り届けられる血液量の不足から、手術のキズが治りにくく、全体的に回復が遅れることがあります。 手術中~手術後は体の水分バランスが大きく変動しますので、むくみや肺の水分貯留が悪化することがあります。 極端に肺に水がたまった場合、肺での酸素の取り込みが不十分となり、人工呼吸が必要になる場合もあります。 手術後は心臓の動きと水分バランスの観察を厳重に行い、薬物量を調整して全身循環を調節維持し、回復を促進します。