よくある術前合併症

冠動脈ステント留置後

冠動脈ステント

喫煙・高血圧・糖尿病・加齢などを背景に、動脈硬化が進行するなどして血管の中が狭くなることがあります。 心臓の周りの動脈(冠動脈)が狭くなると心臓に酸素や栄養が行き届きにくくなり、狭心症や心筋梗塞などがおきることがあります。 これらの予防や治療のために、狭くなった部分を風船(バルーン)で膨らませたり、筒状の人工物(ステント)を挿入・留置して血流を 維持・再開したりすることを心臓カテーテル治療と呼びます。このステントのことを冠動脈ステントと呼びます。

冠動脈ステント留置後、手術や麻酔に関してどのようなリスクがありますか?

冠動脈ステント留置などの心臓カテーテル治療を受けられた患者さんは、このような心臓病の既往がない方と比較すると、 手術や麻酔に際して心筋梗塞などの合併症が生じる頻度が高いことが知られています。また冠動脈ステント留置後は、 ステントの中や血管が閉塞してしまわないように血液を固まりにくくするお薬(抗血小板薬)を内服する必要があります。 このため、手術や麻酔の手技に伴う出血が増えるリスクがあります。

冠動脈ステント留置の治療を受けた人が、手術や麻酔が必要になった場合はどうしますか?

冠動脈ステント留置後しばらくの間は手術中・手術後の心臓合併症などの発生リスクが高いため、緊急性のない手術はステント留置を受けてから1年程度期間を空ける場合があります。 またステント留置後早期は、前述の抗血小板薬を2種類併せて内服する必要があります。抗血小板薬の併用療法といい、期間は使用したステントの種類などによって異なります。 併用療法の期間中は特に手術による出血のリスクが高いため、出血の可能性が高い手術はこの期間が終了するまで延期します。 ただし緊急性の高い手術など、併用療法期間中に手術を行わなければならない場合は、出血のリスクを承知の上で手術を行ったり、 手術前後の期間のみ抗血小板薬を1種類に減らして手術を行ったりします。また麻酔の方法を変更する場合もあります。いずれの場合も、 個々の患者さんの状態や出血・ステント閉塞のリスク、行う手術の内容などを加味して、外科医・循環器内科医・麻酔科医、そして患者さんと協議の上、 手術のタイミングの決定や内服薬の調整などを行います。