よくある術前合併症

全身麻酔と口腔内事情

動揺歯があるとなぜ悪い

全身麻酔で眠っている間にぐらつきのある歯(動揺歯)が抜けてしまう可能性があります。眠っている間に呼吸を助けるためのマスクを顔に当てたり、 チューブを口の中に入れたりする(気管挿管)必要があるため、動揺歯があると欠けてとれてしまう場合があります。 また手術の種類によっては顔の神経を刺激する装置を使用することがあり、手術中に歯を食いしばる動作を誘発するため、動揺歯のぐらつきが強くなることがあります。
全身麻酔の前後で意識がはっきりしない間に歯が抜けてしまうと、誤って気管の中に入り込んで窒息する危険性もあるため、 あまりにぐらつきが強い歯は麻酔中に抜歯させてもらう場合があります。

入れ歯は外した方がよい

全身麻酔の前後で損傷や紛失の危険性があるため、入れ歯は外して入室することが望ましいです。
入れ歯も動揺歯と同様に飲み込んでしまう危険性があり、装着したままの場合は気管挿管の際に口腔内や入れ歯そのものを損傷してしまう可能性もあります。 部分入れ歯の場合、残っている歯の本数や場所によっては、気管挿管の際に負担がかかることがありますので、あらかじめどの部位の歯が残るのかを伺うことがあります。 時には麻酔された後に外すこともありますが、紛失につながるため、あらかじめ外した状態で手術室へ入室することが望ましいです。

口腔内ケアの必要性

全身麻酔で手術を受けることが決まったら口腔内のケアを行い、下記の場合は歯科受診をしましょう。
  • 永久歯に生え変わりの時期のお子さん
  • 入れ歯の合いづらさや虫歯、動揺歯などの口腔内トラブルがある
  • しばらく歯科受診をしていない
口腔内環境を保つことで、肺炎の予防につながることがわかっています。 特に動揺歯がある方は事前に治療が必要なこともあり、直前の治療は出血や感染の面からも良くありません。 手術が決まったら、なるべく早く歯科を受診し、口の中をきれいにしてもらい、動揺歯の有無を確認してもらいます。 抜歯や動揺歯を守るためのマウスピースの作成には2週間程度要する場合があります。 手術を受ける施設によっては、手術前診察を行う外来や入院後に歯科医師や歯科衛生士が口腔内のチェックを行っているところもあります。 手術が直前に迫って歯科受診が間に合わない場合、入れ歯や動揺歯、差し歯などがある場合は麻酔科医診察の際にお知らせください。