よくある術前合併症

降圧薬の術前管理

高血圧と麻酔

麻酔を受ける患者さんで、高血圧の方は多くいらっしゃいます。麻酔中は手術や麻酔薬の影響で、血圧が変化しやすいですが、高血圧のある方は、より大きく変化しがちです。 血圧の変動が大きくなりすぎると、脳や心臓といった重要な臓器に負担をかけ、合併症の原因となることがあります。 そのため、手術前の血圧が高すぎる場合には、手術前に降圧治療を十分に行うことをおすすめすることもあります。 病院で測る血圧は、緊張などで普段より高くなっていることが多いので、自宅での血圧や、血圧手帳なども見せていただけますと、より正確に把握することができます。

高血圧治療薬(降圧薬)の種類と術前管理

高血圧の治療は、生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせて行われます。代表的な降圧薬の種類を以下に示します。 実際には、これらを組み合わせて飲まれている方や、これ以外の種類のお薬を処方されている方もいらっしゃいます。
  • カルシウム拮抗薬:血管に対するカルシウムの働きを抑えることで、血管を広げ血圧を下げます。
  • アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)・アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬:
    アンジオテンシンⅡという血管を収縮させる体内の物質の働きを抑えることで、血圧を下げます。
  • 利尿薬:体の中の余分な水分を排泄することで、血圧を下げます。
  • α 遮断薬・β 遮断薬:血圧を上げようとする神経の働きを抑えて、血圧を下げます。
降圧薬の内服を行っている方は、基本的には手術前日や手術日も普段通りに内服していただくことになります。 ただし、ARB や ACE 阻害薬などの一部のお薬は、手術の内容や患者さんの状態によっては、麻酔中の血圧低下を生じやすくする作用があるとされています。 そのため、全身麻酔の際には麻酔科医や薬剤師が内服薬を確かめて、止めた方がよいお薬があれば前もって中止をお願いすることがあります。 麻酔科医は、麻酔をより安全に行えるように、患者さんがどのようなお薬を飲まれているかを確かめています。 普段からお薬手帳などを用いて記録していただけますと、とても安心です。 もともと降圧薬を飲まれている方は、自己判断で中止などされず、手術前に医師または看護師にお知らせください。